WINDOW RESEARCH INSTITUTE

連載 窓のふるまい学[スイス編]連続インタビュー

ヘルツォーク&ド・ムーロン

クリスティーン・ビンスワンガー、ラウール・メラ(ヘルツォーク&ド・ムーロン)× 貝島桃代、シモーナ・フェラーリ(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)

24 May 2023

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Architecture
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Switzerland

バーゼルを拠点とする建築家ジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンは、スイス連邦工科大学(ETH)チューリッヒ校で建築を学んだ後、1978年に事務所を設立。以来、《テート・モダン》、《プラダ青山エピセンター》、《M+》をはじめとする多くの著名なプロジェクトを世界各地で手掛け、2001年にプリツカー賞、2007年にRIBAゴールドメダルを受賞している。2009年からシニアパートナーを務めるクリスティーン・ビンスワンガー氏、医療施設のプロジェクトに携わった経験を持つラウール・メラ氏に、「窓とヘルスケア」をテーマに研究を続ける建築のふるまい学研究室が話を聞いた。

 

 

──スイスのさまざまな窓の形を調査するなかで、私たちはアルプス地方のサナトリウムの歴史的な事例に着目しました。例えば、トーマス・マンの小説「魔の山」の舞台にもなった、ダボスのシャッツアルプ・ホテルのような療養所にはバルコニーが付いているのが特徴で、患者が治療の一環として日光や外気を浴びられるつくりになっていたとわかりました。現代建築の事例にも調査を広げ、今回は医療施設の設計の取り組みについてお話を伺いたいと思います。

 

クリスティーン・ビンスワンガー (以下:ビンスワンガー) 私も最近「魔の山」を再読しましたが、ハンス・カストルプや他の療養患者たちがバルコニーで横になっている様子の描写──例えば、いかにうまく毛布にくるまるかという、その巧妙な技の描写が100ページ以上にわたって繰り返し出てくるのですが──は、すごいと思いました。建築について言えば、シャッツアルプ・ホテルの断面は、バルコニーの床を居室内の床よりも高く設定して自然光が部屋の奥まで届くように工夫されている点など、実に興味深いです。

 

──ヘルツォーク&ド・ムーロン(以下HdeM)が初めて手掛けた医療施設《REHABバーゼル》(神経系・対麻痺リハビリテーション・センター、1998–2002)には、個室に奥行きのあるベランダ空間があり、まさにこのような系譜を想起させますが、設計するうえで参考にされたのでしょうか?

  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér

ビンスワンガー 実はこのベランダは、REHABを内外がシームレスにつながる「呼吸する建築」として構想するきっかけを生んだ最初の決定事項のひとつでした。しかし、それは私たちがサナトリウムを魅力的な建築のタイポロジーとして意識していたからではなく、施主から患者ができるだけ外に出られるようにしてほしいと具体的に要望されていたからです。寝たきりや昏睡状態の患者でもベッドをベランダに移動できるのは、この施設の精神をよく表していると思います。

リハビリテーション施設は、患者が数週間から1年以上と長期にわたって滞在する点で、特殊なタイポロジーといえます。夏はベランダを日差しから守るために日除け対策がもちろん必要ですが、ベッドには電気機器が組み込まれているので雨対策も必要です。夏の急な雨で看護師が患者全員をすぐに中に入れることができないといった事態も想定しなければなりません。

  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér
  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér

また、手すり子の木製丸棒は光を反射するアクリルガラスのダボで連結されていますが、これは建物全体にさまざまな形で応用されています。ひとつのことがきっかけとなって、連鎖的に次が決まっていきました。例えば、個室は全面ガラス張りですが、奥行きのあるバルコニーと庇を介して外とつなげることで、包み込まれるような居心地のよい空間となり、外部からの視線にさらされずに眺望を得られます。こうして空間に奥行きが生まれたため、天井を貫く透明なプラスチック製の球体「ジ・アイ」(the eye)を設置して、室内により多くの光を取り込み、患者がベッドに横になったまま空を眺められるようにしました。採光量は内蔵の遮光装置によって綿密に制御でき、夜間には照明としても機能します。

 

  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér
  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér

──プログラムについての全般的な話だけでなく、手すりや窓など、個々の要素についても施主と話し合ったのでしょうか?

 

ビンスワンガー ええ、ファサードを含むすべての要素について、十分に話し合いました。私たちはどのプロジェクトでもそうしています。しかし、とりわけREHABの施主は、設計コンペの段階から、この施設で働くさまざまな専門職の人たちに関わってほしいと強く希望していました。医師長はとても明確な考えを持っていましたが、その一方で実験的な提案も積極的に受け入れてくれました。他の方なら賛成しないようなことも、試しにやってみようと言ってくれたのです。例えば、私たちは彼に、外壁の木は無塗装のままにするのがベストだと伝えました。木製窓枠には保護剤が塗られていますが、それ以外の木部は処理されていないため、経年変化していきます。医師長は、これに対し「建物にこうした不完全さがあるのは、患者が自らの身体の不完全さを受け入れて生きていかなければならないという事実の反映でもあるのだから、良いことだ」とおっしゃったのです。

  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér
  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér

──設計チームと施主の間で、とても充実した話し合いが行われていたのですね。

 

ビンスワンガー 設計段階では、個室の原寸大のモックアップもつくりました。建築家なら、例えば天井高は240cmでいいのか、あるいは260cmがいいのかといったことは、当然わかるだろうと思われているかもしれません。しかし今回のように曲面天井、トップライト、ベランダなどを組み合わせた実験的な試みを検証する際には、モックアップでの確認作業は重要なステップなのです。こうした作業は採光、眺望、プライバシーのバランスを探るのに役立ちました。しかし、多くの施主は、なぜこのようなプロセスが必要なのか、最初は理解できないようです。作業量が増えるのは明らかですから。CG模型だけを作成して「いかがでしょうか? では、これでいきましょう」と言う方が手っ取り早いですよね。

 

──HdeMは住宅や美術館といったタイポロジーに長く向き合ってこられましたが、美術館では、医療施設と同様に光の扱いには特に配慮が必要です。こうした設計の経験は、医療施設の窓のデザインにも表れていると感じますか?

 

ビンスワンガー 面白い質問ですね。窓がいかにものの見え方に影響するかという観点から考えてみると、REHABの数年前に実現したミュンヘンの《ゲッツ・コレクション近代美術ギャラリー》(1989-1992)についてお話しできます。作品を展示する壁面を最大限確保するため、窓は上下階それぞれの壁の上部に沿って配置されています。肝心なのは、これらの高窓によって上下階両方で同じ空間体験ができることです。

  • Sammlung Goetz, Munich, Germany, 1992: © Architekturzentrum Wien, Collection, photo: Margherita Spiluttini
  • Sammlung Goetz, Munich, Germany, 1992: © Architekturzentrum Wien, Collection, photo: Margherita Spiluttini

ジャック(・ヘルツォーク)とピエール(・ド・ムーロン)にとって、視覚は駆け出しの頃からの中心的なテーマであり、彼らは常にアーティストと協働してきました。私が入社したての頃、レミ・ツァウグ氏が事務所に来られたときのことを憶えています。図面を見てくださったとき、氏は言葉で説明した内容が視覚的に読み取れなければ、それはいい図面ではない、と言われました。彼は空間の見え方についても教えてくれました。「新生都市? バーゼルの三国間集積地に関する都市研究」の調査の際に、バーゼル郊外を歩き回りながら、「あそこには池、あそこには原っぱ、そしてその間には柵があって……」と、見たものを丹念に記録されていたのを憶えています。それを機に「ただ見る」ことの面白さが、私にもわかるようになったのです。

言うまでもなく、窓もまた私たちがそれを通してものを見るための道具であり、身体と環境との関わりを媒介するものですから、病院といった施設においては特に重要性を帯びます。REHABの個室ではベッドに横たわって過ごすという体験、その他のエリアでは車椅子に乗って過ごす体験を中心に据え、窓を設計しました。

  • REHAB Basel, Clinic for Neurorehabilitation and Paraplegiology, Basel, Switzerland, 1999-2002, 2018-2020 : ©︎Katalin Deér

──窓は1日の流れや季節など、時間的な変化も感じさせてくれるものですが、特に最近は、病院の規模がどんどん大きくなっているので、人々に施設内での方向感覚を与えるうえでも役立つと思います。実際にもうすぐ完成する《チューリッヒ小児病院》(2014–2024)では、さらに大規模なプログラムに取り組んでおられますが、この点についてはいかがでしょうか。

 

ビンスワンガー 施設内における位置の把握は、特に優先度の高い問題です。病院にいる時点で、人はすでにストレス状態にあるわけですから、自分がどこに向かっているのかも把握できないとなると、ストレスはさらに増すでしょう。こうした場合、大抵日当たりの悪い空間に行き着いて、誰かが来て対応してくれるのを待っていなければならなくなるのです。そのようなときこそ、迷ってしまった、あるいは気づいてもらえないと感じさせないようにすることが重要なのです。

チューリッヒ小児病院を含め、私たちが初めて取り組んだ病院施設は、どれも数階だけの水平な建物として、大通りや路地、広場と庭園がある小さな町のように構成されています。このような構成によって、例えば中庭を頼りに自分がいる場所を把握したり、待ち時間には木々を眺めたりできるのです。

  • Childrenʼs Hospital in Zurich, Switzerland, 2014-planned completion 2024 : Switzerland, 2011–2022 : ©︎ ARGE KISPI Herzog & de Meuron / Gruner

──具体的に、どのようにして中庭を介して位置を把握させるのでしょうか? 例えば、日常的なスケール感を持ち込むといった方法ですか?

 

ラウール・メラ(以下:メラ) チューリッヒ小児病院にある16の中庭は、それぞれ形や大きさがさまざまなので、常にわかりやすい目印になります。また方向の把握には、各機能の配置の仕方も当然重要になってきます。ここでは、地上階が最もパブリックなエリアで、救急室、外来診察室、診断・治療室、食堂、セラピールームへのアクセス通路など、病院内で最も人通りの多い場所が集中しています。中階には、中央の「大通り」沿いにさらに通院患者の診療室があり、これらのエリアを取り囲むように、プライバシー性の高いオフィスがあります。この2つの階の異なる機能は、ファサード、コンクリートによる構造グリッド、そして木とガラスのインフィル、それぞれの違いからも読み取ることができます。

  • Mock-up of the Childrenʼs Hospital in Zurich, Switzerland, 2014-planned completion 2024 : ©︎Herzog & de Meuron

ビンスワンガー また、場所によって開口部を変化させることで、プライバシーと開放性の度合いを調整できるようにしています。例えば、地上階の治療室はファサードに奥行きを持たせることで、通行人が近づきすぎないように配慮しています。窓は部屋の中央ではなく角に配置されているので、誰かがその窓に気づいたときには、すでに部屋を通り過ぎていることになります。また、木構造の奥行きによって守られているような感覚がもたらされ、背後の部屋にいる人は窓を開ける時間を長く取ることができます。

中階はオフィス・フロアとして計画されているため、外周部のファサードには規則的なグリッドが表れています。ここでは水平連続窓を設けることで空間の自由度を高め、共用スペースの前に適宜バルコニーを配置しています。この施設でデスクワークをする人――全部門合わせて600人ですが――は全員、この外周部に集まっています。

最上階には、最もプライバシーが守られた空間である子どもたちの個室群があります。各個室には「古典的」とも言えるピクチャーウィンドウが開けられ、それぞれの部屋ごとに設けられた奥行きのある片持ちの勾配屋根や傾斜している雨樋と相まって、居心地のよい雰囲気をつくり出しています。

  • Childrenʼs Hospital in Zurich, Switzerland, 2014-planned completion 2024 : ©︎Herzog & de Meuron

メラ  これらの個室は、1台か2台のベッドが置かれた小さな家、つまり「小屋」のようなつくりになっています。ここには親御さんが宿泊する際に利用する、引き出し式のベンチも備えられています。こちらでも原寸大のモックアップをつくり、居室とバスルーム、さまざまな造り付けの家具や置き家具、照明などの使い勝手を検証しました。また風景を切り取る大きな窓に加え、開閉可能な小さな木製の換気窓を子どもの目線に合わせ壁の低い位置に設けています。この「家」は何よりも子どもたちのためのものですから。

 

ビンスワンガー まさにその通りで、子どもにとって親しみやすい建築にすることが、ここでの重要なテーマでした。それも、壁にキリンの絵を描いたりするようなやり方ではなく、子どもたちに語りかけ、好奇心をかき立てるような建築的要素を模索しました。例えば、小さな開閉式の丸窓があったら、そこにテディベアのぬいぐるみを一晩寝かせておいて、朝になったら取りに行くといったこともできるでしょう。

また建物の入り口には「門」がありますが、これを提案したとき施主は少し困惑していました。「当院はいつも開いているのに!」と。確かに一見奇妙に映るかもしれませんが、このとても長いファサードを前にして、どうやって入り口を見つけられるでしょう? 2層分の高さを持つコンクリート造の門は、まるで大きく開いた巨大な納屋の扉のようで、子どもたちの記憶に残りやすい形になっているのです。

  • Childrenʼs Hospital in Zurich, Switzerland, 2014-planned completion 2024 : ©︎Herzog & de Meuron

──さまざまな種類の開口部があり、それぞれに独自の特徴があるのが素晴らしいと思います。普通、病院にはこれほどバラエティ豊かな窓はなく、1種類の窓が繰り返し使われることが多いですよね。

 

メラ バラエティ豊かなのは中庭も同様で、これらの形状も、3つの階の異なるニーズに合わせて変化させています。窓は極力同じものを用いていますが、中庭の形状が一つ一つ違うのです。これらの中庭には、裏庭のある[ヨーロッパの伝統的な]都市を強く感じさせる雰囲気があり、そのすべてにランドスケープデザインが施されています。中庭を囲む掃き出し窓はごく標準的なものですが、斜めに突き出した日除けや手すりの半透明な色ガラスがあるので、治療を受けている最中やオフィスで座っているとき、開けたままでも中庭から覗き込まれることはありません。こうした外部の要素は決して建築的な遊び心からつくられたのではなく、奥行きわずか7mの「街なか」にある中庭としての親密な雰囲気を守るためのものなのです。

  • Childrenʼs Hospital in Zurich, Switzerland, 2014-planned completion 2024 : ©︎Herzog & de Meuron

ところで、手術室にも窓がありますが、これは執刀医のためのものではありません。手術中は安定した強い人工光が必要で、窓のシェードは下ろされますから。この窓はこうした実用的な空間を一日中清掃する人たちのより良い作業環境を保つために設けられているのです。

 

──清掃やメンテナンスは、まさに医療環境の重要な側面です。病院建築というコンテクストにおいて、このような木製の窓を設けるのは、容易ではないように思いますが、いかがでしょうか。

 

ビンスワンガー この20年間、REHABで窓の交換は必要ありませんでした。申し上げたように、木製サッシには表面処理が施されていましたから。手すりは無垢なので、経年変化で少し変形していますが、これは美観の問題であり、機能上は問題ありません。医療関係の施主は大抵、病院が清潔で衛生的に見えることを好むでしょうが、絶対条件とまでは言わないと思います。チューリッヒ小児病院では、近寄りやすく、親しみを感じられ、かつ疎外感を感じさせない建物の表情が施主に評価されました。

もちろん、病院内のゾーンによって求められる衛生水準は異なります。例えば、手術室は徹底的に清潔でなければなりませんが、治療室におく小さなテーブルは、表面加工を施してあれば、木製のものでも問題ありません。これだけ変化に富んだ複雑な要件を伴う病院建築を設計するには、各種設計者だけでなく、病院のあり方を一緒に考え、実際に使う方たちにとっても、当然、大変な労力が必要になります。品質とは、努力の賜物なのです。

 

メラ  内装の木材は、すべて表面処理する必要がありましたが、例えばプラスチックのような質感になってしまう合成樹脂や、ペンキで覆うといった仕上げより、木の風合いや木目をそのまま生かしたかったので、適切な保護剤を見つけられるまでにかなり時間がかかりました。

  • Childrenʼs Hospital in Zurich, Switzerland, 2014-planned completion 2024 : ©︎Herzog & de Meuron

──HdeMの設計する窓には、日除けや開閉機構など、多くのレイヤーや要素があり、さまざまな方法で操作することができますが、病院では室内気候を慎重に調整することが多く、開閉できる窓という考えはなかなか受け入れられないと思っていましたので、驚きました。

 

ビンスワンガー 医療施設の設計に関して、ここスイスはある意味、建築家にとっての理想郷と言えるでしょう。現在、アメリカでも大きな病院を設計していますが、窓を開けられる機会は限られています。もちろん、スイスでも常に窓を開けられるわけではありませんが、基本的には可能な限り、新鮮な空気を自分で調整して取り入れられるように配慮しています。

 

メラ 私たちが一番に目指すのは、人が病院を怖れるのではなく、居心地がいいと感じて好きになってもらえる、自宅のような雰囲気を持たせることです。チューリッヒ小児病院には約2,000の個室があり、構造全体に渡ってさまざまな変化をつけています。このような複雑な状況に柔軟に対処できるのは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した私たちの手法によるところも大きいと思います。しかし、もっと根本的な話としては、この分野でのイノベーションに対するオープンな姿勢、そして「病院はどう在るべきか」という自らの問いに対して、既成のルールに代わる理にかなったアイデアを見出そうとする心構えが重要なのです。

 

クリスティーン・ビンスワンガー/Christine Binswanger
1991年にヘルツォーク&ド・ムーロンに入社。1994年、パートナーに就任。2009年よりシニア・パートナー。スイス、フランス、スペイン、アメリカを中心に、さまざまな国でプロジェクトを担当。アメリカ・ミネアポリスの《ウォーカー・アート・センター増築》、同国マイアミの《ペレス美術館》、フランス・コルマールの《ウンターリンデン美術館増築》など、美術館プロジェクトを多数手掛ける。主な医療プロジェクトに、スイス・バーゼルの《REHABバーゼル》(神経系・対麻痺リハビリテーション・センター)、《チューリッヒ小児病院》などがある。スイス・バーゼル・ドライシュピッツ地区、フランス・リヨン、およびスペイン・ブルゴスにて大規模な都市計画プロジェクトに携わる。代表的な住宅プロジェクトに、フランス・パリの《スイス通りの集合住宅》、スイス・ウスターの《ツェルヴェーガー・パーク》がある。また立体駐車場、店舗、レストラン、住宅を融合させたアメリカ・マイアミビーチの複合施設《1111リンカーン・ロード》を担当。
1984–90年にスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)にて建築学を学ぶ。建築・芸術界におけるリーダーとしての積極的な活動が評価され、2004年にメレット・オッペンハイム賞を受賞。

 

ラウール・メラ/Raúl Mera
1992年に製図工として建築の世界に入り、1996年に見習いを終える。1997–2001年にスイス・バーゼルデザイン学校(SfG)で芸術デザイン学を学ぶ。2001年にギゴン/グイヤーで、2001–08年にブフナー・ブリュンドラーで建築家として実務経験を積み、チューリッヒ応用科学大学(ZHAW)から学位を授与(特別優秀生)。学位取得後は、EM2Nとハリー・グッガー・スタジオで働きながらZHAWで教鞭を執り、ETHZ土木工学科でデザイン助手を務める。2017年、ヘルツォーク&ド・ムーロンに入社。《チューリッヒ小児病院》ファサードの施工ディテールの検討を中心に行う。この経験を活かし、現在《バーゼル大学病院第3病院》などの医療プロジェクトに携わる。

 

貝島桃代/Momoyo Kaijima
2017年よりETHチューリッヒ校教授として「建築のふるまい学」研究室を主宰。日本女子大学卒業後、1992年に塚本由晴とアトリエ・ワンを設立し、2000年に東京工業大学大学院博士課程満期退学。2001年より筑波大学講師、2009年より筑波大学准教授。ハーバード大学デザイン大学院(2003、2016)、ライス大学(2014–15)、デルフト工科大学(2015–16)、コロンビア大学(2017)にて教鞭を執る。住宅、公共建築、駅前広場の設計に携わるかたわら、精力的に都市調査を進め、著書『メイド・イン・トーキョー』、『ペット・アーキテクチャー・ガイドブック』にまとめる。第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館キュレーター。2022年にウルフ賞(芸術部門)受賞。

 

シモーナ・フェラーリ/Simona Ferrari
2017年よりETHチューリッヒ校「建築のふるまい学」研究室の指導・研究助手。東京工業大学、ウィーン工科大学、ミラノ工科大学、チューリッヒ芸術大学にて学ぶ。創作活動においては、建築、写真、文章に至るさまざまなスケールやフォーマットを扱う。2019年の「ユーロパン」コンペで選出されたイタリア・ヴェルバーニアのアチェターティ社旧工業用地のためのプロジェクト《Landscape In-Between》の共同制作者。2014年から2017年までアトリエ・ワンに所属し、複数の国際プロジェクト、会場デザイン、インスタレーションを手がけた。文部科学省国費外国人留学生奨学金、MAK芸術建築センター(ロサンゼルス)のMAKシンドラー奨学金受給者。

 

Top image: REHAB Basel, Centre for Spinal Cord and Brain Injuries, Basel, Switzerland, 1998–2002 : ©︎Katalin Deér

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