WINDOW RESEARCH INSTITUTE

RESEARCH

窓研究所は2007年より国内外の大学・研究者と協働し「窓」について多面的に研究する活動「窓学」に取り組んでいます。
窓を歴史的、文化的に位置づけ考察することで、よりよい建築、都市、社会づくりに貢献することをめざします。

2018

スイスの窓のふるまい学
貝島桃代|スイス連邦工科大学チューリッヒ校 建築のふるまい学講座
スイス連邦共和国はアルプス山脈を挟み、ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の4つの言語圏・文化圏があり、多様な地域性を一国の内に有している。地域ごとに気候や地形が大きく異なり、また歴史的には、陸続きであるヨーロッパ諸国との間の人・材料の移動や、地勢や税制などの政治的事情に応じた多様な農業・工業の盛衰を経験している。こうした要因により、スイス各地に見られる窓のあり方は、デザイン・様式・系譜・使い方など、窓の「ふるまい」において多様である。また、現代建築の系譜においては、バナキュラーな窓の文脈を引き受けた上で、マリオ・ボッタやペーター・メルクリなど、建築家による特色ある窓が生み出されており、それらは CO2 削減政策下にある今日まで続いている。これらを背景として、本講座ではスイスの古今東西の窓事例を収集・分類し、ドローイングを作成した。また関連する建築家にインタビューを行い、その内容をまとめた。(2018-2019年度)

2016

先進建築学における窓
アンズスタジオ
ロボットやコンピューターなど、最新のテクノロジーを取り込んだ先進建築学の立場から、窓の未来を考察する。形を生み出す理論について歴史を振り返ると、「パタン・ランゲージ」「シェイプ・グラマー」「アーキタイパル」など様々なものがあったが、現在ではコンピューテーションによる形態生成が新しい潮流となっている。次世代の窓のファブリケーションには、マテリアル・オネスティや積層造形法による3Dプリンティングの技術に可能性があり、空間を内包するカタチとしての「空間形」というアイディアが窓の将来につながっていくことが考えられる。(2016年度)
窓をつくることから学ぶ I-III
小林博人|慶應義塾大学小林博人研究会
窓は、窓を通して内から外を眺める行為と、外から窓を見るという二つの相異なる方向性を持つ行為を誘発する。それらの行為には、各々異なる風景が現れる。窓を通じて見る景色は、普段見慣れている街の風景を窓で切り取ることによって、自分の街の知らない一面を垣間見せる。建物の窓に出現する風景は、その窓辺で起きている行為を外から眺め、その人のこと、その家のことを窺い知らせる。本研究では、窓が持つそれらの二方向性、切り取る風景・窓辺の風景が語ること、そしてそれぞれの窓のある場所との関わりに着目した実験窓づくりを、4つの異なる文化圏(滋賀県、コンゴ民主共和国、ネパール、クロアチア)において行った。(2016−2018年度)
Window Spaces
カリン・ザンダー、アルノ・シュリューター、ロラン・シュトルダー、ヴィットリオ・マニャーゴ・ランプニャーニ|スイス連邦工科大学チューリッヒ校
壁に貫かれた窓は、建物内部とその周囲の外界を繋ぐ。窓自体は物理的な三次元の空間に存在する。その構築要素のみならず、直近に隣接する空間の構築要素の空間である。ある空間から別の空間への移行を明確化するために、歴史の流れの中で幾つか新たな局面の始まりがもたらされた。 この視点に基づき、ヨーロッパの都市の建築内部のコンテクストにおける異なる状況を分析し、広く使われている窓の原型の一部を特定することで、それらの建築要素としての特徴、そしてそれらが室内空間に与える影響、公共の分野におけるそれらの作用を見出すことを目指した。(2016)
民族史的連関と産業社会的連関にまたがる窓 I-III
塚本由晴|東京工業大学塚本由晴研究室
19世紀にイギリスで始まった産業革命の波は徐々にヨーロッパ各国に伝播し、人々の暮らしに強い影響を与えて行った。20世紀の初頭は民族誌的関連の中で暮らしていた人々が、産業社会的関連に出会った時期である。この時期、特に北欧では、傑作と呼ばれる作品を多く残した建築家が目立つ。これは、北欧に自然や人のふるまいから培われた独自の民族的関連があったところに大量生産のしくみと一体化した産業社会的関連が衝突し、その反応が強く現れたためと考えられ、彼らのような建築家は建築がまだ民族誌的関連の中にあるときに建築を学び、実務経験を積む過程で産業社会的関連の波に遭遇した世代と言える。 本研究では、これらの建築家による作品を分析し、その窓が自然や人のふるまいをいかに統合しているか、どのような生産体制でつくられていたか、の2点について明らかにした。(2016−2018年度)

2015

映画の窓
五十嵐太郎|東北大学五十嵐太郎研究室
これまでに研究対象としてきた視覚的題材の延長として映画を採り上げた。邦画では家族映画というジャンルについて、洋画ではアルフレッド・ヒッチコックの作品と007シリーズについて、窓の描かれ方を分析した。ヒッチコック作品では様々な手法により、物語の先を予感させるものとして窓が扱われている。007シリーズでは、窓を使った派手な演出が繰り返し登場する。これはアクション映画における定番パターンとなっている。邦画では時代によって異なる傾向が読み取れる。そのなかで特筆すべき映画として、小津安二郎『東京物語』、森田芳光『家族ゲーム』、黒沢清『トウキョウソナタ』の3本が挙げられる。(2015年度)
窓の視線学
北山恒|横浜国立大学大学院/建築都市スクール“Y-GSA”
窓にまつわる重要な要素として「視線」を採り上げ、それによってどのように場所に対する認知や行為が形成されるのかを分析した。分析の対象には、現代都市における集合的アクティビティを生み出す空間である「Spaces of Commoning」を取り上げる。これに当てはまる事例を、リオデジャネイロと東京で選び出し、その中から鬼子母神の参道、有楽町の自動販売機酒場、広尾の木造密集市街地の3箇所についてケーススタディを行った。「視線」と空間要素の関係に着目することにより、一般的な「窓」とは異なる「概念的な窓」について構想した。(2015年度)
窓の明かり学
小林茂雄|東京都市大学工学部建築学科
夜間の窓は、光の透過する方向が昼間とは逆転し、内部の様々な情報を外部に伝える機能を持つ。ここでは窓を通して屋外に発せられる光(窓明かり)に着目して、夜間のフィールド調査と模型実験を行った。はじめに首都圏の89の地域を対象として、街路に面している窓の大きさと窓明かりの状態(明るさ、光色、内部の見通し)を現地調査した。次に、室内の照明状況と窓の材質を変更可能な1/50の模型を作成し、窓明かりの条件を変えて被験者評価実験を行った。これらの結果から、窓明かりの灯る実態を示すと共に、窓明かりと夜間街路の安心感・景観・住民特性の表出などとの関係性を示した。(2015年度)
窓の社会学
町村敬志|一橋大学 浜日出夫|慶應義塾大学 原田豊|科学警察研究犯罪予防研究室 西川純司|神戸松蔭女子学院大学 山本理奈|東京大学大学院
窓は社会のなかでさまざまな役割を果たしている。5人の社会学者が専門的視点からこの課題を探究した。「メディアとしての窓」では人間どうしのつながりの多様性を窓がどう表現してきたかを振り返った。「見えない光と窓」は結核治療を事例に近代日本で窓と光が「健康」と関連づけられてきた歴史を考察した。「建物と窓の増殖」は近代社会の進展が「窓」に象徴される透明性の増大と関わることを検証した。「超高層マンションと窓」は超高層マンションにおいて眺望性がもつ意味を分析した。「侵入口としての窓」は犯罪社会学の見地から物理的な窓だけでなくメタファーとしての破れ窓の修復も重要なことを示した。「社会が窓をつくり、窓が社会をつくる。」二重の規定性を改めて確認した。(2015年度)
写真と窓 I-II
ホンマタカシ
窓ガラスと写真が切っても切れない関係にあることは、両者の歴史がほぼ同じであることからもうかがえる。初年度は、古今東西の写真家が撮った窓の写真を、「By the window」、「Through the window」、「With window」、「From outside」というように、窓と人間の視線の関係性を示す4つの英語の前置詞で分類・分析した。次年度には、以上の分類で得た知見をふまえて、自分が撮影してきた窓の写真について考察した。『Architecture Landscapes』という写真シリーズでは、建築の窓を撮影した写真と、その窓から見える風景の写真を交互に並べて、建築を周囲の環境の一部としてとらえ直すことを試みた。またル・コルビュジエの作品についても同様の手法で撮影し、2019年にはその成果を写真集としてまとめ、『Looking Through: Le Corbusier Windows』というタイトルで発表した。(2015−2016, 2019年度)
全球マド全史 I-III
村松伸|東京大学村松伸研究室
六角美瑠|東京大学村松伸研究室
人間はマドをつくることによって人となった。「homo fenestrator」(ホモ・フェネストラトール/マドをつくる人)としての人間観である。そして、マドは人と環境をつなぐ多様な意味を有する媒介である。マドの誕生以後、地域生態適応型社会、成長型社会のなかで、人はマドをつくり、社会を進化させてきた。ただ、現今世界は、成長型社会のもつ過消費、不均衡分配に揺れ、そして、それが地球環境問題を生起させてきている。本研究は、5万年の人類の歴史のなかで、全球的につくりだしたマドを総覧、分析することによって、今後のマドのみならず、環境と人とのありかたへの示唆を得ることを目標としている。(2015−2016, 2020)

2014

漫画の窓
五十嵐太郎|東北大学五十嵐太郎研究室
戦後の漫画においてどのように窓が描かれてきたかを調べることにより、一般の人々が窓にどのようなイメージを抱いてきたかを明らかにした。調査対象は長谷川町子『サザエさん』、藤子・F・不二雄『ドラえもん』、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で、いずれも国民的な人気を得た漫画である。その中で窓や開口部が描かれているコマを抽出し、それぞれの場所でどのような活動が描かれたかを調べた。また漫画の研究者である、大塚英志、森川嘉一郎、森山高至の3氏にインタビューし、窓の描き方の変化や社会との関連について聞いた。この研究によって、窓は物語を駆動する装置として働いていることもわかった。 (2014年度)
窓の仕事学 I-Ⅱ
塚本由晴|東京工業大学塚本由晴研究室
手仕事が行なわれる工房では、室内環境の調整に機械設備を用いる工場とは異なり、窓を通して、外から光や風を取り入れ、熱や煙や蒸気を外に出している。そしてその窓に寄り添うように職人がものづくりを行なっている。このような特徴を持つ手仕事の窓に注目し、ものづくりや食品加工を行う工房、街とのつながりのある商店などを、現地で調査を行うことにより収集・記録し、窓を介したモノと人の連関を示す連関図を作成することを通して、自然要素と手仕事を結びつける窓のあり方を明らかにした。人やモノと、光、風、熱、煙、蒸気などの要素を線で結び、それをアイソメ図に重ねることで、「窓の連関図」を作成した。 (2014-2015年度)
柱間装置の文化誌 I-Ⅲ
中谷礼仁|早稲田大学中谷礼仁研究室
日本建築における窓は、大きく「柱間装置」に含まれる。その言葉は柱と柱の間にある「装置」全てを指すもので、単なる開口から壁、格子、扉、障子などがそこにはめられることで、日本建築特有の豊かな空間が生み出される。 本研究では以上のコンセプトにもとづき、そのおどろくべき豊かさの歴史と展開をまとめることとした。その特徴は文献、図化調査以外に、柱間装置の移ろいを最も記録しやすい媒体として短編映画を作成することにあった。本研究では都合四篇の映画を作成し、最終的には柱間装置のコンセプトが都市にまで展開していく近世からの大阪の風景までを活写することに成功した。(2014-2019年度)

2013

蒸暑地域における窓の研究 I-IV
久保田徹|広島大学アジア建築都市環境研究室
本研究室では、インドネシアの公共事業・国民住宅省と共同で、中間層向け集合住宅(ルスナミ)の省エネ基準を開発している。このルスナミは、主要都市で建設される高層集合住宅(主に分譲)であるが、急増する中間層の受け皿とすべく国家的プロジェクトとして建設されている。中間層とはいえ比較的低所得な層を対象としており、政府補助を受ける代わりに建設コストが抑えられている集合住宅もある。それゆえ、建物の質や性能は悪く、現時点では省エネの考慮はほぼ皆無である。ここでは、この省エネ基準化プロジェクトを通じて、急成長する東南アジア中間層を対象とした「蒸暑の窓」を考察する。(2013-2016年度)
窓を中心とした省エネルギーを目指した改修に関する研究 I-V
清家剛|東京大学清家剛研究室
社会が成熟するに従って、建築も新築や建替え中心から、改修工事を中心とするストック型社会に移行するといわれており、日本でもその傾向が見られ始めている。このような改修には、内装のみの改修から、設備改修、耐震改修、外皮の改修など、様々なレベルのものがある。なかでも、外皮の改修は、建築物の性能維持あるいは性能向上に欠かせず、性能的には弱点となるがデザイン上重要な窓の改修は、ストック型社会では特に重要な技術となる。そこで、窓に対する様々な改修の事例を収集し、現状を分析することで、窓改修のあり方を示すとともに、建て替えや改修により発生する窓の廃棄物にも視野を広げ、窓のライフサイクルを考慮したリサイクルシステムを構築することを目指した(2013-2016,2018年度)

2012

窓の健康学 I-III
伊香賀俊治|慶應大学伊香賀俊治研究室
性能の良い窓が健康という便益をもたらし、ひいてはお金の節約にもなることを明らかにする研究を続けている。初年度は窓と睡眠の関係について研究した。就寝中の室内温熱環境が睡眠に及ぼす影響、模擬転居に伴う室内温熱環境と睡眠状態の変化、睡眠効率と作業効率の関係、睡眠の質向上と経済性評価の関係について実験した。次に窓と身体活動量の関連について着目し、住宅の温熱環境と断熱性能が身体活動へ与える影響の検証も行った。これらの調査から、家に付いている窓の性能を上げれば、結果として健康な人が増え、会社の業績が上がり、産業が活性化して、CO2も削減されるという、良い循環が生まれると考えられる。(2012-2014年度)
窓の格言
五十嵐太郎|東北大学五十嵐太郎研究室
建築の言説をテーマに、近世以降の西洋と日本の建築家(歴史家、批評家を含む)が書籍や論文において、どのように窓について語ってきたかを調査した。調査の目的は、窓のもつ意味の広がりを再確認することである。著名建築家137名の主な著作を調べ、 <窓・開口・採光・孔・穴>といったキーワードを含む299の言説を抽出し、なかでもより格言らしいものを120事例ピックアップした。成果物としては、建築家の格言と言説を3日めくりの万年カレンダーにまとめた「窓の格言学カレンダー」を制作した。(2012年度)

2011

窓の民族学I-Ⅱ
佐藤浩司|国立民族学博物館
かつて北ユーラシアから北アメリカの人々は土で屋根を覆った土小屋に住んでおり、その天頂には構造上閉ざすことのできない空隙が残されていた。この天窓を通して家に出入りしていた人々は、梯子をかけ、その先端に入口を守る守護霊を飾った。これが窓の起源である。人の魂も天窓から出入りするとされ、天界と人間界の通り道でもあった。なぜ人間はかくも居心地の悪い、閉ざされた空間を終の住処に定めたのか。住まいの本質は、暗く、自然の厳しさから守られ、大地の懐に抱かれて眠るところにあったに違いない。そんな住まいの最大の矛盾、それは天窓である。けれども窓がなければ外界との接点をもてない。つまり、人間の住まいの歴史は、窓という矛盾を抱えて出発したのだ。(2011,2013年度)
窓と街並の系譜学 I-Ⅲ
塚本由晴|東京工業大学塚本由晴研究室
「窓のふるまい学 I-III」では、窓を気候風土や生活習慣との均衡関係の中で位置づけた。本研究では、複数の窓が通りの壁面に反復することで、複雑なリズムやパターンを都市空間につくりだす窓のあり方に着目し、集合としての窓を調査・分析した。建物の規模や用途が違ったとしても、建物の壁面に並ぶ窓には、気候風土との対応や、操作性、施工性の制約の中で試行錯誤を繰り返し、洗練された一定の型が認められる。そうした窓の反復によって街路空間は統合されるのである。またそこで生活する個の存在を象徴する窓が、お互いに一定の距離を保ちながら集合することによって、街路空間は公の水準を象徴するものとなる。ここに個の参加が全体を支え、全体のあり方が街並の独自性を与えるというもっとも単純な公共空間のモデルをみることができる。(2011-2013年度)
窓の方言学
ヨコミゾマコト|東京藝術大学ヨコミゾマコト研究室
日本各地に分布する伝統的民家の多様性は地域性に由来するものと捉えられがちであるが、特に窓まわりに注目する限り、そうでないことに気づく。地域を超えて同様のディテールが散見されるのだ。それはまるで方言のようである。青森県から沖縄県まで36ヵ所に及ぶ実測調査で収集した図面や画像、動画を「方言形成論」を類推的に用いながら比較・分析した。その結果、類型的とも言える建具、格子、縁側などから構成される中間領域が、住まい手によるしつらえと一体となることで、多彩な用途や変化に富む気候風土に応えている、豊かな窓のありさまが浮かび上がってきた。(2011年度)

2008

環境制御装置としての窓 Ⅰ-Ⅲ
小玉祐一郎|神戸芸術工科大学小玉祐一郎研究室+エステック計画研究所
外界の気候を制御し、安定した室内気候を形成する装置として窓を位置づける。その性能やデザインの高度化・多様化によって、地域に賦与された太陽や風といった自然のポテンシャルの活用はさらに促進され、新しい建築デザインの展開が期待される。20世紀は潤沢なエネルギー供給に支えられた設備技術への過度な依存が地球環境負荷を増やし、他方で居住空間の自然からの隔絶を深めてきた。近未来の持続可能な建築においては、変化する自然に応答し、享受する居住環境の形成が求められる。本研究では、温暖地を中心に古今の建築事例の調査・分析を通して、これからの窓のシステムを提案した。(2008−2010年度)
ものがたりの窓
原広司|原広司+アトリエ・ファイ建築研究所
物語りあるいは文学作品に現れる窓を抽出し、窓をめぐる想像力の射程を検討すると同時に、建築を専門としない一般の人々が、窓をどのように解釈しているかを把握することに加え、そのためのデータベースの作成を遠望し、そのための方法の探求することを目指した。対象とするテキストは、1.児童文学、2.ミステリー(探偵小説)、3.古典的な文学作品とした。テキストは無数に存在するため、その選択がランダムになることは不可避であるし、従って、研究の態度・方法はオープンエンドな性格をもつこととなった。(2008年度)

2007

窓の歴史 Ⅰ-Ⅲ
五十嵐太郎|東北大学五十嵐太郎研究室
まず始めに、窓を通じて建築史の再読に着手した。とくに窓はさまざまな技術の結節点である。異なる分野のテクノロジーの進化を調べ、それらを束ねることによって、歴史的な転換となる窓の変革を位置づけた。その後、絵画、広告、漫画、映画などの視覚メディアの歴史をたどりながら、いかに窓が表象されてきたかを分析した。こうした素材からあきらかになるのは、以下の事項である。過去に人々がどのように窓辺でふるまっていたか、各時代において窓が喚起したイメージ、創作者は窓からいかなる物語的な想像力を働かせたのか、そして異なるメディア間に共通する表象のタイプなどである。(2007−2009年度)
窓のしりとり
千葉学|東京大学千葉学研究室
窓は、どんな建築にも見出すことのできる要素のひとつであり、地域ごとの生活習慣や気候風土、時に政治をも体現する。窓の多様性は、土地の物理的、文化的環境の多様性を代弁している。一方で窓は、必ずしも風土や文化から一義的に決まるものでもない。窓の周辺に生起する人々の様々な振る舞いが特有の形式を誘導し、その窓が逆に文化的、風土的特異性を醸成していくこともある。本研究は、このような認識のもとに古今東西の興味深い窓を拾い上げ、それらがどのように「しりとり」できるか、という視点で窓の再解釈、再定義を試みたものである。全く異なる地域の窓に見出す共通性や、特定の地域における窓の多様な展開の発見に、興味は尽きない。(2007年度)
窓のふるまい学 Ⅰ-Ⅲ
塚本由晴|東京工業大学塚本由晴研究室
建築のなかでも最も多様なふるまいが集中する窓、そして建物の個別性を超えて地域や街に反復される窓を、世界各地の都市で収集、実測し、その比較から窓のコンセプトや、社会のなかでの窓の位置づけを検討した。世界28カ国における優れた窓の事例を採取・調査し、個別の窓に集められた窓のふるまいを比較検討することで、日差し湿度など気候風土への配慮と、宗教的規範や生活習慣などへの配慮の均衡として、窓のコンセプトを抽出した。(2007−2009年度)
窓のある家
手塚貴晴|東京都市大学手塚貴晴研究室
建築の基本的なエレメントは、屋根、壁、床、そして窓。ひとつでも欠けると、建築が建築でなくなるくらい重要なポイントだ。例えば、まったく窓のない箱をつくれば、それは建築ではなく、シェルターという構築物である。だから窓を理解すれば「建築であること」がどういうことなのかを理解できるのではないかと考えた。そこで、そもそも窓とは何かという存在論的な問いを追求するために、スタディモデルの制作や、具体的な住宅作品のリサーチを行った。その結果、明らかになったのは、窓は自明なものとして存在するわけではなく、さまざまな周辺状況との関係性によって浮かびあがるものということである。(2007年度)

*掲載の情報は各研究の発表当時のものです。