CCA-WRI Research Fellowship Program
The Under- and Overground Built Environments of the Soviet-German Uranium Mining Corporation Wismut
冷戦の始まりとともに、赤軍に同行してドイツの占領地域に到着したソ連の軍事地質学者たちは、エルツ山地の旧銀鉱山で、ウラン鉱石であるピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)を発見した。その後、この放射性鉱物の大規模な鉱床が見つかったことで、鉄のカーテンによって分断された陣営間の核兵器開発競争への道が開かれ、核時代の幕開けを告げることとなった。同時に、この発見は、ソ連の支配下にあったドイツのザクセンとテューリンゲンに大規模な資源採掘をもたらした。これにより、成立間もないドイツ民主共和国(東ドイツ)は、ソ連の核開発計画における主要なウラン供給国となり、世界有数のウラン鉱石生産国へと変貌した。
採掘を担ったソ連=東ドイツ共同出資の株式会社ヴィスマット社(Wismut AG)は、東ドイツにおける「国家の中の国家」としての地位を急速に確立した。鉱石の採掘、輸送、加工のための大規模な施設に加え、1950年代には最大13万人に達した労働者のために、住宅、消費生活、スポーツ、教育、文化、娯楽を支える独自のネットワークを整備した。その医療体制は、受け入れ国である東ドイツの医療体制を上回る規模にまで拡大した。軍事的な機密管理のもとに置かれながらも、ヴィスマット社は対象地域の市民社会と空間的に近接しており、そのことは地域の社会的な生態系に大きな負荷をもたらした。
本プロジェクトは、ウラン採掘企業の40年間にわたる操業が地域にもたらした空間変容の歴史と、その残された影響を考察する。この社会主義体制下の現象をグローバルな文脈に位置づけることで、環境的・社会的公正を資本主義と非資本主義の対立から捉える枠組みを問い直す。ヴィスマット社が形成した地上と地下の建築環境の総体は、固有性と普遍性をあわせ持つ事例である。それを通して、採掘の産業化が、冷戦によって分断された双方の陣営において、20世紀の空間をめぐる思考と実践をどのように形づくったのかを探る。
CCAでの調査について
モントリオールのCCAでの滞在中には、ヴィスマット社の建築環境と、西側でそれに相当する多国籍企業エルドラド社(Eldorado Ltd.)が形成した空間を比較する機会も得た。エルドラド社は、カナダのオンタリオ州とサスカチュワン州で操業していた。この比較でとりわけ関心を寄せたのは、採掘の影響を受けた地域の植民地的な状況である。いずれも、西洋で一般的に想定される海外植民地主義の認識枠組みには収まらず、東ドイツでは「文化的な関係が逆転した」植民地主義、カナダの各州では入植者植民地主義という形をとっていた。
また、アーカイブにおいて何が可視化されるのか、近代における地下空間の設計がどのように成立したのかといった問題も、研究のなかで重要性を増していった。一方、CCAのアーカイブに収められたヴァン・ギンケル・アソシエイツとセドリック・プライスの資料群から、非永続的な都市のあり方を構想するプロジェクトを発見したことは、新たな研究の方向を開いた。現在は、この問いを引き続き探究している。
Symposium Presentation
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「Underground Anxieties: 2023 CCA-WRI Research Symposium」での発表より。シンポジウム全編の記録映像は、CCA ウェブサイトでご覧いただけます。
About the Fellow

オクサナ・グリノヴィッチ/Oxana Gourinovitch
2023 CCA-WRI Research Fellow
オクサナ・グリノヴィッチは、建築家、キュレーター、建築史家である。2005年にベルリン芸術大学で建築学修士号を、2020年にベルリン工科大学で博士号を取得した。ベルリン、ロッテルダム、アムステルダムの建築事務所で実務に携わり、ベルリン工科大学とアーヘン工科大学で教鞭を執った。また、カナダ建築センターと窓研究所によるリサーチ・フェローとして、モントリオールのCCAで研究を行った。
国家社会主義体制下に形成された建築環境を主な対象とし、20世紀から21世紀にかけての地政学的変容との関係を研究している。ドイツ研究振興協会(DFG)、マーレ・バルティクム財団、グラハム財団の支援を受け、マルゴ&パウル・バウムガルテン奨学金や、ベルリンの大学によるティブルティウス賞などを受けている。現在は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHチューリッヒ)のエゴン・アイアーマン・フェローを務める。


