WINDOW RESEARCH INSTITUTE

JP | EN

CCA-WRI Research Fellowship Program Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet

Made of Sunshine: Urban Commons and Real Estate, Montréal, Canada

光をめぐる都市のコモンズと不動産開発──モントリオール(カナダ)

本プロジェクトでは、都市の成長と日照へのアクセスという二つの力のせめぎ合いを手がかりに、モントリオールの都市形態を考察する。

キャロル・ウィリスは『Form Follows Finance』のなかで、ニューヨーク市が1916年に導入した、建築の高さや形態を制限するゾーニング規制について論じている。建物の上層部を段階的に後退させる「セットバック」形式を生み出したこの規制は、単に都市の日照や通風を改善するためではなく、不動産価値を守るために設けられたという。当時、オフィスビルは供給過剰の状態にあり、不動産所有者は市場の安定化を図るため、建設の制限を求めていた。1930年の研究『The Skyscraper: The Study in the Economic Height of Modern Office Buildings』では、建物を高層化するほど収益が最大化されることが示された。そこからは、収益性を高めるために、地価が超高層建築の高さを直接左右していたことが読み取れる。

同様に、セントラル・パークの整備も、周辺の不動産価値を大きく押し上げた。ただし、こうした経済的な動機は、美観をめぐる説明の陰に隠れがちであった。マシュー・ガンディーは『Concrete and Clay』のなかで、ゾーニング規制と同じく、セントラル・パークのような公園整備を推し進めた主な要因は、不動産投機であったと論じている。公園への近接性によって不動産価値は最大40倍にまで上昇したが、その整備に伴い、1,600人が立ち退きを余儀なくされた。とりわけ大きな影響を受けたのは、黒人、ドイツ系、アイルランド系のコミュニティであった。

モントリオールでも、フレデリック・ロー・オルムステッドによって1876年に整備されたモン・ロワイヤル公園は、地価の上昇という経済的な観点から正当化された。しかし、その整備が高層建築の建設ブームを引き起こすことはなかった。モントリオールで高層開発が本格化するのは、プラス・ヴィル・マリーが建設された1960年代である。十字形平面をもつこのタワーは、近代主義を象徴する存在となったが、その形態には経済的な動機があった。より高い賃料を得られるオフィス空間に、日照を最大限に取り込むための設計だったのである。ニューヨークと同様に、タワーの設計や広場、地下の遊歩道は、単に美観上の判断によるものではなく、複雑な金融上の調整の結果でもあった。そこには、利益を追求しながら都市環境を再編していく動きが表れている。

プラス・ヴィル・マリーの建設を契機に、モントリオールではオフィス・タワーの建設ブームが起こり、その後、スーパーブロック型の大規模住宅開発が続いた。1970年代になると、『モントリオール・ガゼット』紙は、急速かつ統一性を欠いた開発が都市の景観を変えていくこの動向を、「開発業者の侵略」と呼んだ。1973年にデトロイトで開催された建設業者の大会では、モントリオールは開発業者にとって「自由に開発できる」都市として紹介された。市民の意見を取り入れることなく、水面下で土地を買い集め、既存の建物を取り壊して、スーパーブロックや高層建築を建設できるというのである。

今日のモントリオールでは、コンドミニアムや賃貸集合住宅を中心に、高層開発が再び活発化している。これらの新たなタワーは、居住者専用の屋上施設などを備える一方で、地上の公共空間を変容させ、既存建築や公共空間における日照へのアクセスを損なうことも多い。建築の高さを制限する規制は、モン・ロワイヤルへの眺望を保護するために設けられているが、大半の地域では、影や日照の確保が考慮されていない。そのため、日照へのアクセスは、主として開発業者自身の判断に委ねられている。2022年夏の時点では、近年の高層開発について、一般に公開された影の影響評価は見当たらなかった。

アリーナ・ナズメーヴァ/Alina Nazmeeva

2022 CCA-WRI Research Fellow

タタールスタン共和国生まれの教育者、建築家、メディアアーティスト。物理的なインスタレーションとデジタル・シミュレーションを横断的に用いながら、テクノロジーおよびデジタルメディアが物質的・社会的・文化的環境にもたらす影響の研究に取り組んでいる。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校建築学部にて、コンピューテーション分野の助教を務める。マサチューセッツ工科大学(MIT)建築・都市計画学部で修士号を取得。ミシガン大学のフェロー・イン・レジデンス(2022–2024年)、カナダ建築センター(CCA)のフェロー(2022年)、ストレルカ研究所のリサーチ・フェロー(2017年)を務めた。MIT Future Urban Collectives Labでは主任研究員として、新たな共同性のあり方を探る物理的・デジタルな空間の試作に取り組んだ。また、MIT Real Estate Innovation Labでは、仮想世界やオンラインゲームにおける経済とデザインを研究した。

作品は、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展、シアトルのFutureArts、Boston Cyberarts、Chicago Gamespace、ロサンゼルスのArchitecture + Design Museum、ニューヨークのPlexus Projects、チューリッヒのDA Zなどで展示され、Beall Center for Art + Technologyでの展示も予定されている。執筆した文章は、『Plat』『Voices(Towards Other Institutions)』『Media-N』などに掲載されている。ハーバード大学デザイン大学院、プラハ美術・建築・デザインアカデミー、ミラノ工科大学で研究や作品を発表しており、SIGGRAPH Asia 2024でも発表が予定されている。