7 APR - 6 MAY,2018
窓学10周年を記念して2017年秋、東京の青山スパイラルでの展示を皮切りにスタートした「窓学展―窓から見える世界―」は大学巡回展として、金沢工業大学、東北大学を経由し、3会場目となる名古屋工業大学で開催された。会期は2018年4月7日(土)から5月6日(日)の30日間。新年度始まって間もない時期の開始、かつ大型連休を挟んだ期間ではあったが、最終集計で展示には約740名、トークイベントも含めると800名を超える来場となった。
会場は「NITech Hall」400人収容のホール1階のホワイエスペース。7つの研究展示をそれぞれする紹介する”窓”を備えた什器が訪れる人を迎える。これまでの会場に比べると什器をコンパクトに配置し、密度感のある会場構成をおこなった。同会場は、1階ホールでの他のイベント来場者や、2階にあるラーニングコモンズを利用する学生が必ず通る場所ということもあり、通り掛かりに足を止めて鑑賞する場面もみられ、実際には集計来場者数以上の目に留まったはずである。NITech Hallが大学正門入ってすぐ傍にあるということもあり,学生に限らず一般の方々にも多く来場いただいた。
また、会期初日の4月7日(土)15時からNITech Hallにて、「窓学」総合監修/「窓学展」展示ディレクターである五十嵐太郎東北大学教授と、米澤隆氏(大同大学講師/米澤隆建築設計事務所主宰)を迎え、モデレーター北川啓介名古屋工業大学教授によるトークイベントが開催された。会場には90名近くの聴衆にお越しいただいた。冒頭、YKK AP専門役員窓研究所の山本所長から、窓学展10周年の研究の経緯や東京展の様子なども紹介。
これに続き、五十嵐太郎教授からはこれまで東北大学五十嵐研究室が行ってきた漫画、映画などと窓の関係性や今回展示の「窓の漫画学」を中心としたレクチャー。米澤隆講師は意図的な窓の仕掛けや窓がレイヤを構成し環境も操作するという、自身の設計事例を紹介しながらのレクチャーが行われた。その後、五十嵐太郎教授と米澤隆講師、北川啓介教授をモデレーターとしてディスカッションが行われ、モダニズムにおける水平窓に始まり,石造建築の穿つ窓から現代における窓辺のアクティビティまで話は膨らみ、来場者も興味深く聴き入っていた。
トークイベント後には会場であるホワイエに軽食や飲み物を用意し懇親会も行なった。登壇者を囲んでの積極的な質問や、展示を観ながら来場者同士の交流もうまれ、大変盛況のうちに終えることができた。
会期中、地元新聞社などメディアの取材もあり、掲載記事を見て来場したという声も聞かれ、名古屋での窓学の拡がりを感じる出来事となった。来場者アンケートには「窓を工学的にとらえている展示の中で、原広司とレアンドロ・エルリッヒの対話では感覚的・芸術的視点から見ており、様々な窓の見方ができた」というものがあり、工業大学で開催した展示としても、研究と展示が融合した興味深いものであった。窓を広義で考える素晴らしい機会になったのではないかと感じている。