21 OCT - 12 NOV,2017
窓学10周年記念「窓学展―窓から見える世界―」の金沢巡回展は平成29年10月21日(土)から11月12日(日)までの24日間、金沢工業大学ライブラリーセンター展示室において開催された。会場となったライブラリーセンターを含め金沢工業大学は建築家・大谷幸夫が設計、1982年に日本建築学会賞を受賞している。残念ながら青山スパイラルで展示されたアートインスタレーションは巡回されなかったが、7研究室の研究成果をはじめとする大変充実した展示内容となった。開催して最初の週末は金沢工業大学の大学祭と重なり、一般の方々を含む多くの入場者を迎える事ができた。最終的には会期中の入場者数は1000人を超える結果となった。その内訳は、会場が大学内であった事もあり約80%が10代20代で学生が中心であった。
金沢展では、会場の形状が東京展とは異なるため展示物の配置を変更した。その際、東京展で行われた「それぞれの什器に配された窓を一列に並べる」という展示コンセプトを踏襲しつつ新たな構成を行った。これにより、東京展との連続性を持たせつつ、大谷幸夫の空間とも相まって魅力的な展示空間が生まれたと考えている。各什器も十分な間隔をとる事ができ、来場者もゆっくりとゆとりをもって鑑賞する様子が見て取れた。
また、会期中の11月10日(金)18時30分より、金沢工業大学ライブラリーセンター2階のAVホールにて「窓学」総合監修/窓学展展示ディレクターである五十嵐太郎東北大学教授と佐藤考一金沢工業大学教授、宮下智裕金沢工業大学准教授による記念トークイベントが開催された。会場には100名近くの多くの聴衆が集まり、大盛況であった。冒頭、YKK AP専門役員窓研究所の山本所長から、窓学10年間の研究の経緯や東京展の様子などが紹介された。それに続き、五十嵐太郎教授から、これまで五十嵐研究室が行ってきた絵画・映画などと窓の関係性や今回の展示「窓の漫画学」などを中心としたレクチャーが行われた。
その後、五十嵐太郎教授と佐藤考一教授とで宮下智裕准教授をモデレーターとしてディスカッションが行われた。そこでは、ドラえもんに見る窓の社会的な役割や、建築生産的な見地から産業における窓の系譜などへ話が膨らみ、来場者も興味深く聴き入っていた。会場に来ていた学生からも設計でファサードを考える際に窓をどのように捉えたらいいかなどといった質問もあり、大変盛況な記念トークイベントとなった。
来場者のアンケートからは「普段あまり考えたことのない窓の役割を考えるいい機会となった」「様々な角度から窓を見ることで時代性がわかった」などの意見が数多く見られ、「窓」というものをあらためて考える非常に良い機会になったのではないだろうか。その意味でもアルミ産業の中心的な地域である北陸でこの窓学展巡回展が開催できたことの意義はとても大きい。