CCA-WRI Research Fellowship Program 2022-2024 Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet
Made of Sunshine: Urban Commons and Real Estate, Montréal, Canada
都市のコモンズと不動産開発――モントリオールにおける実践
31 Mar 2025
本プロジェクトは、都市の成長と日照へのアクセスという二つの力のせめぎ合いに着目し、その視点からモントリオールの都市形態を読み解くものである。
キャロル・ウィリスは『Form Follows Finance』において、ニューヨーク市の1916年ゾーニング規制(建物高さを制限し、いわゆるセットバック型の形態を生み出した)が、単に光や空気へのアクセスを改善するためではなく、不動産価値を保護することを目的として導入されたものであると指摘している。これらの規制は、オフィスビルの供給過剰期において、不動産市場の安定化を求めた地権者の働きかけによって実現したものであった。1930年の研究『The Skyscraper: The Study in the Economic Height of Modern Office Buildings』は、高層化が収益を最大化することを示し、土地価値が建物高さを規定し、収益性の最適化に直接的に関与していたことを明らかにしている。
同様に、セントラルパークの整備は周辺の地価を大きく押し上げたが、その経済的動機はしばしば景観的・美的な理由によって覆い隠されてきた。マシュー・ガンディは『Concrete and Clay』において、公園整備の背後にある主要な推進力が不動産投機であったことを指摘している。実際、セントラルパーク周辺の地価は最大で40倍にまで上昇した一方で、その開発は1,600人以上の住民の立ち退きを伴い、とりわけ黒人、ドイツ系、アイルランド系コミュニティに大きな影響を与えた。
モントリオールにおいても、1876年にフレデリック・ロー・オルムステッドによって設計されたモン・ロワイヤル公園は、土地価値の向上という経済的論理によって正当化されたが、ニューヨークのような高層建築の急増を引き起こすことはなかった。モントリオールにおける高層開発は1960年代に入ってから本格化し、その契機となったのがプレイス・ヴィル・マリーの建設である。十字形平面をもつこのタワーはモダニズムの象徴的存在となったが、その形態は経済的合理性に基づくものであり、高い賃料が見込まれるオフィス空間に十分な日照を確保するために設計されたものであった。ニューヨークと同様に、タワーの形態や広場、地下プロムナードは単なる造形的判断ではなく、複雑な金融的調整の結果として現れたものであり、利益を軸とした都市環境の再編を反映している。
プレイス・ヴィル・マリーの建設を契機として、モントリオールではオフィスタワーの建設ラッシュが生じ、その後、大規模な住宅スーパーブロックの開発が続いた。1970年代には『モントリオール・ガゼット』紙がこうした動向を「開発業者の侵攻」と呼び、「統一性を欠いた場当たり的な開発が都市環境を再編している」と批判的に論じている。1973年にデトロイトで開催された建設業者の大会では、モントリオールは「開発者にとって開かれた都市」と評され、デベロッパーが公的な関与なしに土地を集約し、既存建築を解体してスーパーブロックや高層建築を建設できる状況にあったとされる。
今日のモントリオールでは、コンドミニアムや賃貸集合住宅を中心とした高層開発が再び活発化している。これらのタワーは、居住者のみが利用できる屋上庭園やプールといった私的なアメニティを備える一方で、その影は地上の公共空間にまで及び、街路空間の質や既存建築の採光条件に影響を与えている。現行の規制はモン・ロワイヤルへの眺望を保護するために高さ制限を設けているが、多くの地域において日影や採光に関する具体的な規制は存在せず、日照へのアクセスは事実上デベロッパーの判断に委ねられている。2022年夏時点において、近年の高層開発に関する日影調査は公開されていない。
『2022 CCA-WRI Research Symposium』(2022年8月24日、モントリオール)記録映像より
アリーナ・ナズメーヴァ/Alina Nazmeeva
建築家、教育者、メディアアーティスト。タタールスタン生まれ。フィジカルなインスタレーションとデジタル・シミュレーションを通じて、テクノロジーとデジタルメディアがもたらす物質的・社会的・文化的な影響を探究している。イリノイ大学建築学部にてコンピュテーション分野の助教を務める。MIT建築・都市計画学部で修士号を取得後、ミシガン大学(2022–24)、カナダ建築センター(2022)、ストレルカ・インスティテュート(2017)でリサーチフェローとして活動。
これまでMIT Future Urban Collectives Labでは新しい集合のかたちをめぐる物理/デジタル空間のプロトタイプ開発に取り組み、Real Estate Innovation Labではバーチャル空間における経済と設計の関係について研究。作品はヴェネチア建築ビエンナーレ、FutureArts Seattle、Boston Cyberarts、Architecture + Design Museum(ロサンゼルス)、Plexus Projects(NY)、DA Z(チューリッヒ)などで発表され、Beall Center for Art + Technologyでの展示を予定している。執筆は Plat、Voices、Media-N などに掲載。ハーバードGSD、プラハ美術・建築・デザインアカデミー、ミラノ工科大学、SIGGRAPH Asia 2024(予定)などで研究発表を行っている。







