16 Sep 2013
アーティスト、小説家、建築家、三者三様の窓の創作がおさめられた本書は、長島明夫が編集発行人をつとめる建築雑誌『建築と日常』の別冊として2012年に発行されました。
アーティストのqpは、写真という手法で、どこにでもあるような住宅の「窓」を室外から観察し、 日常を坦々と羅列することで作品を作り上げています。
小説家の柴崎友香は、室内や室外からみた日常の「窓」を小説空間の中で主人公に視覚的に記述させていきます。
また、建築家の中山英之は、世界を内と外に明確に隔ててきた建築に新しい「窓」を挿入することで、その二つをイコールにする試みを自作からポエティックに例示しています。
室外からみた窓、室内外からみた窓、内外のない窓といったそれぞれの視点の土台となるフォーマットには私たちの「日常」が選ばれています。
2011年3月11日以降、当たり前にある「日常」というものが当たり前ではなかったことに気付き、この世界に対する畏怖や疑念が強まった人は私も含め非常に多いと思います。
今和次郎の考現学や、赤瀬川原平の超芸術トマソンの文脈を引き継ぎながらも、想定できない今ここにある日常とどのように対峙するのかという命題に対して、2012年に出版された本書は、当たり前にあった日常を「窓」を通して観察することで日常をとりもどす、言い換えれば
『窓の観察』 (『建築と日常』別冊)
著者|qp、柴崎友香、中山英之
編集発行者|長島明夫
出版年|2012年
定価|900円+税