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連載 窓のふるまい学[スイス編]連続インタビュー

ペーター・メルクリ

ぺーター・メルクリ × 貝島桃代、グレゴワール・ファルケ、シモーナ・フェラーリ(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)

17 May 2021

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スイスを代表する建築家・ペーター・メルクリは、師である建築家ルドルフ・オルジアティとの出会いをきっかけにそのキャリアをスタートさせ、1978年には自身のスタジオ「Studio Märkli」をチューリッヒで設立。以降ハンス・ヨーゼフソンの美術館《彫刻の家》などの建築作品を通じ、都市、歴史、知覚といった建築の根源的な問題を思索し、実践し続けている。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)の「建築のふるまい学」研究室を主催する建築家・貝島桃代氏、同研究室所属のグレゴワール・ファルケ氏、シモーナ・フェラーリ氏が、メルクリ氏のチューリッヒのスタジオで話を聞いた。

 

──私たちの研究室は、スイスの建物における「窓」に改めて注目し調査を行ってきましたが、同じスイス国内でも地理的・文化的条件によって、その形態は種々様々であることが分かってきました。気候条件の違いもその大きな要因です。ことに環境意識の高まった昨今では、ガラスがどれくらいの厚みでなければならないかといったことや、光や温度、湿度など室内環境をどう調整するかなども関係してきます。これに関しては、建築家ならば誰しも思うところがあるのではないでしょうか。
メルクリさんは、大型オフィスビルや学校建築を設計なさるかたわら、近頃は住宅のお仕事もなさっていますね。リュミスベルクの《ヴァイスザッヒャー・アトリエハウス》(2013年、ベルン)では、窓に対するアプローチが変わったようにもお見受けします。そこでご自身にとってそもそも窓とはいったい何ですか、との問いから始めてみたいと思います。

ペーター・メルクリ(以下:メルクリ) さすがにそれは、答えようがありませんね。なぜなら窓は私個人とは何の関係もありませんから。むしろそれは建築の第一義的行為に関わることです。建築をつくるにはまず、所与のプログラムを収めるために、一定の範囲を囲い込むでしょう? ところが囲いがあるだけでは、人は暗がりの中でじっと惨めに過ごすことになる。そこでこの囲いをこじ開けて陽の光を入れ、外界との接点を設けるわけです。また、その壁に一定の厚みか奥行きをもたせれば、領域間のつながりをいかようにも調節できます。

そして「スイスの窓」という具体的な議題に移る前に、まずは環境についての本質的な問題に触れておきましょうか。つまり、環境保護と消費社会が両立するかということです。しませんね。窓を極厚ガラスにすれば、外気温が零下10℃でも窓際ではビキニ姿で過ごせるなんて、いったいそんなことをして何の意味があるのでしょう。ところがスイスの現行法はまさにそれを想定している。窓や断熱材を分厚くして済むなら苦労はない。我々人間を甘やかしている各種規制は、どうも道義的責任に駆られているらしく、常識が置き去りにされています。スイスで気温が零下になるのは年間たったひと月程度です。寒ければセーターを羽織るなり、その都度各自が判断すればいいでしょう。ということを、市当局にはしきりに伝えているんですが。

──ええ、大変重要なご指摘です。

メルクリ なにしろ、この領域にはもう専門の部局がありませんからね。役人は建築家に対して「断熱材ならこれこれの量が必要です」と伝えるだけでは、もはや不十分なようです。そして建築物理学(日本では建築環境工学)の専門家はといえば「断熱には、これと、それと、あれも……入れましょう。暖かいに越したことはありませんから!」と言う。しかし、建築形態をつくる立場からすると、外部になくてはならない要素もあるのです。

その点、ミース・ファン・デル・ローエの建物は、ぎりぎりまで削ぎ落とされていますが、必要最小限の建築の要素は残されている、と私は思います。もしそれ以上に切り詰めようとすれば、ただのガラスの箱になってしまい、もはや建築と呼べるような代物ではなくなる。それは建築物理学を無意味なまでに突き詰めただけのものにすぎません。

つまり、建物の断熱性能を上げたら済むような話ではないんですね。それは建築に付託されたすべての権限に関わることです。まず大前提として理解する必要があるのは、のっぺりとしたただの壁だけが、そこにあるということです。その次が問題で、では壁のどこに切込みを入れるか。視線をどう導くか。プロポーションをどうするか。たとえ内側からきれいに見えても、外側から見て小さすぎてはいけません。以上すべてを自らの意志で決め、実行に移さなくてはなりません。

そして、そのための建築のツールは一式揃っているのに、どうも忘れ去られてしまっているようです。たとえば、窓に抱き・・*1 をつける建築家が今日日どれほどいるでしょう。エンガディン地方の一般的な農家では、窓が内広がりになるよう抱き面に角度をつけることで、室内の暖気を逃さずに陽射しを取り込み、また塗装も赤ではなく白くして部屋を明るくしています。昔ながらの農家は、まさにこの国の宝です。たとえばル・コルビュジエは、こうした農家にヒントを得て「リボン・ウィンドウ」(水平連続窓)のスケッチを描いています。

をどう穿つかは、構法にもよります。その最良の実例が、ヴェネツィアのカナル・グランデにあります。沿岸のゴシック様式の建物はいずれも壁がソリッドですが、手前にロッジアがあるおかげでファサードがぐっと開放的になり、現代住宅のようでもあります。その隣のルネサンス様式のパラッツォ(邸宅)は、ペアコラム(双柱)を配して見通しを良くしているけれども、窓のガラスは躯体より奥まったところにあります。
マックス・ラファエル(美術史家・美術評論家) が壁の歴史を論じたテクスト*2 によると、面がこのようにレイヤリングされることで奥行きが知覚されるようになったそうです。壁はもはやモノリスではなく、いわば深度をもったプラン(Tiefenplan)として立ち現れるのです。

──では、建築「術」を身につけているはずの私たち建築家は、いったいこうした問題について何ができるのでしょうか。

メルクリ 建築物理学のためにパッケージを用意する──決して開くことのできない、完成された外被をただ適用する──以上のことはしてくれるな、とでも言われない限り、何をしてもいいはずです。経験を積めば積むほどに建築の構成要素への理解が深まり、次第に自在に扱えるようになります。若いうちに模範解答を教わらなくても、べつに困りません。むしろいったん完成品のイメージが植え付けられてしまうと、新たな学びを得ることはできない。無知もひとつの財産です。その方が先入観に縛られずに自分の頭で考えられるでしょう?

たとえば、柱梁構造がそもそも住宅には不向きな形式であると私に気づかせてくれたのは、ETHの講義ではなく、ゲーテの『イタリア紀行』でした。外周の柱の並びに沿って囲いをつくっておきながら(レンガなどで)塞ぎ、その面をわざわざ穿って光を取り込む。いかにも矛盾したことをしているわけですが、良いものをつくるためなら仕方がない。

──おっしゃるように、建築とは種々の要素の組立てですから、各要素の相互関係を知らずして、それらを自在に扱えるはずもありません。その点、アトリエハウスは「マニエリスム」とでも呼べそうな作品です。ただしマニエリスムといっても、(ポストモダン的という意味ではなく)良い意味でのそれです。というのも、柔軟な姿勢でもって各種要素を自在に配置なさっているから。

  • Weissacher atelierhouse, Rumisberg, Berne, 2013 : © Mats Eser
  • Weissacher atelierhouse, Rumisberg, Berne, 2013 : © Studio Märkli
  • Weissacher atelierhouse, Rumisberg, Berne, 2013 : © Mats Eser

メルクリ そのとおりで、どれほど要素を増やそうと設計者の勝手ですが、問題は、はたしてそれを破綻なくまとめ上げられるかどうかなのです。ですから、建築家として独立するにはよほど経験を積まないといけない。歴史は、こうした各要素のしかるべき使い方を教えてくれます。ましてこれらの要素に対して自分なりの解を出し、既存とは異なる使い方をしたいのであれば、それらがどのように歴史の中で進化してきたのかを、しっかり把握しておく必要があります。

アトリエハウスの設計を始めた当初は、メインファサードをそれらしくするために柱を並べてみたものの、最終的にはこの柱を太らせてピア*3 にしました。エルレンバッハの《ヒュルツラー邸》(1997)の時と同様に、ここでもメインファサードの開き方、つまり外の景色をどう切り取ろうかと悩みました。水平連窓にすれば、室内から見える景色は一定するけれども、それでは面白くないので、ところどころ壁で塞いで視線の向きが切り替わるようにしました。これなら同じ景色を複数のアングルから眺めることになり、そのたびに知覚上の奥行きも伸縮する。これは、映画が二次元のスクリーンに映写されるのに、観客には映像の奥行きが知覚されるのと同じ原理です。

残る3つの壁は、それぞれ異なる用途に対応しています。これらの壁の下部には濃い色で区別された台座がありますが、斜面の傾斜に沿っているため、場所によっては立ち上がりがほとんどありません。このように壁面にレイヤーを重ねることは、住空間の保護のみならず、視覚的な効果をもたらします。黒と白、光と影の綾によるこの視覚的効果は、特にメインファサードに顕著で、光の当たる凸面が手前に飛び出す一方、凹んだ面は影に隠れます。それはいわば「壁」という建築言語を光によって溶解させるようなものです。それを最初に試みたのが、チューリッヒ市エルリコンの《ビルヒ学校》(2004)です。

こうしたツールは、どれもその建築家のレパートリーのようなものですから、使ってはいけない理由はないでしょう。だいいち、なめらかで均一な壁よりも、凹凸のあった方が味わいが深まるし、それぞれの部材やそれらの関係性が識別しやすくなります。

  • Sketches for Weissacher atelierhouse : © Studio Märkli
  • Weissacher atelierhouse, Rumisberg, Berne, 2013 : © Mats Eser

初期作の《トリューバッハ=アツモースのニ戸建て住宅》(1982)に取り組んでいた頃に比べれば、今の方がよほど伸び伸びと仕事ができるように思います。これは私の性分でして、とにかくわからないものには手を出せない。この住宅を担当した頃は、まだこうした工夫や改良を施すだけの技量が身についていなかったので、定石どおりに各窓を部屋の中心線に揃えて穿つしかなく、よって窓割りが左右非対称ではありません。初期に手がけた建物は、一作ごとにまるで違います。当時はまだ建築言語を習得中の身で、すべてが手探りでした。どんな空間や雰囲気にしたいかという漠然としたイメージしかなかった。それでも小住宅の設計だったからこそ素材や開口部の形式を試行錯誤できたのであって、仮に大型物件であったら、とても恐ろしくて実験などできません。

  • Two houses, Trübbach-Azmoos, 1982 : photographer unknown, © Studio Märkli

──先ほどお話にあったヒュルツラー邸は、あのガラス張りの箱型キッチンが印象的です。しかもこの箱と屋外との間にも、もう1枚窓を挟んで、屋内と屋外を二重に隔てておられます。なぜ、そうした複雑な関係性へと至ったのですか。

メルクリ このキッチンは、自己完結した小部屋であるという点ではシャワー室に近いけれども、どこから光を取り入れるかは自由です。光をたっぷり入れてもよいし、あるいは、長細い隣室から漏れてくる仄明かりだけで過ごすのも良いでしょう。それから天井に映り込んだ陽光が揺らめくさまも、とても素敵です。こんなふうに透明なもの──ガラスなりカーテンなり可動間仕切りなり──に隔てられた空間は極めて美しい。雰囲気ががらりと変わります。

この住宅には、古典的なモダニズムへの批判めいたところがあります。背後の斜面に面した壁は、水回りや階段を格納する一種のコールド・バッファ(緩衝空間帯)です。かたや正面は、左右非対称に配したコンクリートスラブでファサードを部分的に塞いでいるだけです。私は、この住宅が周りの環境にまるで馴染んでいないとの理由でさんざん叩かれましたけれど、あいにく都市計画基準にはまったく抵触していません。

朝方のキッチンには、隣室のリボン・ウィンドウ越しに光が漏れてきます。この住宅の構成は非常に明快で自由です。断熱材と配管・配線のいっさいを、コンクリートの壁や天井や床といった軸組に組み込んでいるから。そしてこのコンクリート軸組こそ、建設プロセスにおける各種要素の集大成であり、また開口部の輪郭そのものなのです。

  • Hürzeler House, Erlenbach, 1997 : photographer unknown, © Studio Märkli
  • Hürzeler House, Erlenbach, 1997 : photographer unknown, © Studio Märkli
  • Hürzeler House, Erlenbach, 1997 : photographer unknown, © Studio Märkli

ここでは周りの状況に応じてファサードの開き具合を変えています。だから、1軒の小住宅に事実上3つの類型があります。2階部分が街路に面した外観はおおむね閉じており、ここに水回り用の小窓を3つと、大きめの窓2つは抱きの深いものと浅いものとを穿っています。東立面には例のリボン・ウィンドウを設け、残り2面をそれぞれ北西と湖に向けて開いています。

──永らく、これまでの住宅のお話にあったような設計手法をレパートリーとなさってこられましたが、やがてビルヒ学校などのプロジェクトになると柱梁構造が増え、ファサードが構造の一部と化します。となると、表現の面でも路線転換を迫られますよね? 従来のように用途ごと立面ごとに窓の表現を変えるわけにはいきませんから。
《ノヴァルティス・キャンパス・ビジター・センター》(バーゼル、2006)や《シンセス本社屋》(ゾロトゥルン州ツヒヴィル、2012)にしても、やはりそうした構造表現が目を引きます。いったいなぜ、そちらへ路線を切り替えたのですか。プログラムゆえ、あるいは規模ゆえなのか、それとも予算が増えたからでしょうか。

メルクリ やはり周りが都市であることが最大の理由です。ビルヒ学校のある新興住宅地には、まだ共有施設がほとんどなく、だからこの校舎はどの面も周囲に対して大きく悠然と開いています。躯体に穿った開口部にはガラスを嵌めるか、もしくはコンクリート・ブロックで塞いでいます。ここではオープンエリアや広場によって変化をつけると同時に、各区画・領域(幼稚園、学校、食堂、体育館)の間に区切りをつけています。むろん、ほかの構法であれば、区画ごとに開口の形式を変えられますが、それでは目に優しくない。しかも用途によって求められる明るさが異なる以上、ほかの構法ではプロポーションがきれいにまとまりません。

  •  Im Birch school, Zurich-Oerlikon, 2004 : © Georg Gisel
  •  Im Birch school, Zurich-Oerlikon, 2004 : © Georg Gisel
  •  Im Birch school, Zurich-Oerlikon, 2004 : © Yuri Palmin

──とはいえ、ファサードが突如として構造と化したのも、結局は規模ゆえではありませんか。一定の規模以上の学校やシンセスなどのオフィスビルともなると、さすがに開口を個別に設計していられませんから、どうしてもこうした規則性が必要になります。

メルクリ シンセス本社屋では、ファサードを内と外の2レイヤーに分けることでスケールを使い分けています。外側の背の高いコロネード(柱廊)が雄大な自然風景の続きだとすれば、内側のレイヤーはオフィスや工作室の囲いです。いまおっしゃった建物はいずれも、奥行きがかなりあります。この社屋にしても平均32メートルの奥行きがあるので、そのぶん開口面積を増やしています。

  • Headquarters building for Synthes, Zuchwil, Solothurn, 2012 : © Caroline Palla
  • Headquarters building for Synthes, Zuchwil, Solothurn, 2012 : © Caroline Palla
  • Headquarters building for Synthes, Zuchwil, Solothurn, 2012 : © Caroline Palla

私が複数の構法を使い分けられるのも、ひとえに経験を積んだから──これがだめならあれ、というふうに切り替えられるからです。予算の多寡はまるで関係ありません。工程がどうのということでもなく、むしろ自分が心底やりたいと思えるかどうかが重要なのです。我ながらこの職業に就けたことに無上の喜びを覚えます。アートを起源にもちながらも、日常生活の生々しい現実にも直結した職業ですから。

──その他の、たとえばイタリア旅行なども、知識と経験を積む機会になったのではありませんか。

メルクリ 旅行もそうですが、私にとっては美術館が「第二の学校」でした。常日頃から絵画や彫刻などのアートにアンテナを張り、そこからできるだけ多くを学ぶべきだと思います。アートには、「いかに生きるか」という人類にとって永遠の問いに対するヒントが詰まっていますから。我々の職能とは、「建てるアート(術)」でしょう? アート自体は、先端技術や最新のキッチンデザインを知らなくても成立する。我々の用いる技術・技法は日々進化していますが、アートは常にアートなのです。この世に「プリミティヴ」アートなどというものは存在しません。アートか、それ以外のものしかない。今から千年前にも「プリミティヴ」アートはなかったし、今もない。

我々建築家が一定の制約下で仕事をしなければならないからといって、想像力のスイッチを切る必要はないでしょう。内部と外部それぞれの境界線を相互貫入させる場合、その方法は無限にあります。スイスの農家ひとつとっても、その事例を何百と集めれば論文を1本書けます。単純な幾何学形態をベースにした家屋に少しずつ手が加えられ、地域ごとに固有の表現が生まれる。だから、その経緯を書けばいいのです。

  • Headquarters building for Synthes, Zuchwil, Solothurn, 2012 : © Caroline Palla

──たしかルドルフ・オルジアティが、グラウビュンデン地方の古民家の窓を大量に蒐集していましたね。

メルクリ ええ。私はオルジアティにも多くを学びました。右も左も分からない若者の前に、もし話し相手になってくれて、そのうえ背中を押してくれる人物が現れたとしたら? オルジアティの建てた小住宅は、まるで鳥の巣のよう。これは褒め言葉です。ところが彼は、この巣の外壁をわざわざくり抜いて、特定の方角に向けて大きく開口を取り、そこにガラスを嵌めた。ほら、これで冬場も暖かいよ、と。オルジアティが母校ETHで学んだのは、環境工学でもなければ電卓の打ち方でもありません。だから自由でいられたのです。今日、規制によってこうした自由が許されなくなったのは、我々にとってとても不幸なことだと思います。

個人的には、住宅の室温は18℃、最大でも20℃あれば十分だと思うし、それなら工費もかなり節約できます。室内気候も今よりましになるでしょう。肌寒い日にはセーターを1枚羽織ればいい。まずはこの室温の上限の話を、政治家に提案してはどうでしょう。その話が通ったら、今度はETHが、ガラスの加工・流通・施工に費やされる内包エネルギーがどれほど削減できるかを算定する。政治にはデータが必要だけれども、その数字を出せるのは我々専門家だけでしょう? ETHなどの大学や公共機関ならば、個々の意見を集約し、それに対する解答を用意して政治家に伝えることもできるはずです。研究テーマとしては悪くないと思いますよ。

注釈
1 :抱き(reveal)は、開口部と壁の境界において開口部に接している面、あるいはそこに配された材を指す用語。単に窓枠を指す場合もあれば、より抽象的に、開口部の「深さ」を示すため用いられる場合もある。
2 :Das göttliche Auge im Menschen: Zur Ästhetik der romanischen Kirchen in Frankreich, 1935
3 :ピア(窓間壁)は屋根架構を支持する垂直材という柱の機能をもちながら、内外の領域を遮断する壁としての役割を備えた、いわば「幅の広い柱」である。メルクリ氏は内外の領域限定に特化した壁(カーテンウォールなど)とピアを明確に区別していると考えられる。

 

ペーター・メルクリ
1953年チューリッヒ生まれ。スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)にて建築を学ぶ。在学中から建築家ルドルフ・オルジアティや彫刻家ハンス・ヨーゼフソン他と協働。1978年チューリッヒに事務所を設立。2003-2015年ETHZ建築学科教授。

貝島桃代
2017年よりスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)「建築のふるまい学」教授。日本女子大学卒業後、1992年に塚本由晴とアトリエ・ワンを設立し、2000年に東京工業大学大学院博士課程満期退学。2001年より筑波大学講師、2009年より筑波大学准教授。ハーヴァード大学デザイン大学院(GSD)(2003、2016)、ライス大学(2014-15)、デルフト工科大学(2015-16)、コロンビア大学(2017)にて教鞭を執る。住宅、公共建築、駅前広場の設計に携わるかたわら、精力的に都市調査を進め、著書『メイド・イン・トーキョー』『ペット・アーキテクチャー・ガイドブック』にまとめる。第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館キュレーター。

グレゴワール・ファルケ
建築家、研究者、建築評論家。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)にて建築を学んだのち、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)にてペーター・メルクリに師事し、2014年修士取得。2015年ファルケ・アルシテクトを設立。プロジェクトの規模の大小を問わず、その特異性と複雑性に力点を置く。木造に造詣が深く、既存建物の改修実績あり。スイス国内建築誌に定期的に寄稿。クリストフ・ヘルシャー教授の認知科学講座と貝島桃代教授「建築のふるまい学」講座との合同企画フューチャー・ラーニング・イニシアティヴのプロジェクトチームに2019年2月参加。

シモーナ・フェラーリ
建築家・アーティスト。2017年よりスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)「建築のふるまい学」研究助手として指導にあたる。ミラノ工科大学、ウィーン工科大学、東京工業大学(外国人特別研究員)にて建築を学ぶ。2014年から17年までアトリエ・ワンの国外プロジェクトを担当。チューリッヒ芸術大学美術学修士課程在学。「ユーロパン 15」(2019)コンペ勝利にともない、現在は伊ヴェルバニアのアセターティ社工場跡にてプロジェクト(メタクシア・マルカキと共同)を進行中。

Top image by Chair of Architectural Behaviorology

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