WINDOW RESEARCH INSTITUTE

Grant Results 2022年度 採択テーマ CCA-WRI Research Fellowship

A new building under the sun
太陽のもとに現れた新たな建築

キャスパー・レイン・エベンスゴー

31 Mar 2025

Keywords
Architecture
Building code
CCA-WRI

公益財団法人 窓研究所は、カナダ建築センター(Canadian Centre for Architecture)と共同でフェローシップ・プログラム「CCA-WRI Research Fellowship」を実施しています。本記事は、2022年度リサーチフェローのひとりであるキャスパー・レイン・エベンスゴー氏の研究テーマを紹介するものです。

 

 

研究テーマ概要

本研究は、ニューヨークとロンドンにおける高層建築の設計と建設が都市環境に与える影響を調査するものである。都市の垂直性と光の分布に関わる政治的な結びつきに焦点を当て、これらの決定が住民の生活に及ぼす影響を明らかにするほか、夜間の美観と居住性を考慮した人工照明が周囲の住民の生活の質に与える変化についても考察する。高層建築は、人々の居住地に対する愛着をどのように形成するのか。また、高層建築が夜間の美観と居住性の両方を保つべく設計された人工照明にはどのようなものがあるか。さらに、高層建物の影の中で暮らし、働くことを強いられる人々の生活の質はどのように変化してきたのか。

これらの問いを「Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet」というCCA–WRIリサーチ・フェローシップの趣旨に基づいて追求するため、本研究では光(自然光および人工光)を分析の出発点として取り上げ、高層建築の設計と建設が人々の住環境への愛着の形成に与える影響を調査する。本研究では、2022年夏にカナダ建築センターで行ったアーカイブ調査を基に、特にニューヨークのシーグラム・ビルとロンドンのホワイトチャペル・エステート近隣の高層ビル群という二つの事例を対比的に検討する。シーグラム・ビルは「光の塔」として設計され、緻密な照明計画により「太陽のもとに現れた新たな建築」を実現した事例であり、ホワイトチャペル・エステートのビル群は隣接地域の日光を完全に遮る事例である。

本研究は、高層建築が光と陰の設計を通じて人間の生活をどのように支え、成長を促進するか、また同時に垂直都市における生の条件を脅かす現実について批判的に検討することを目的とする。光を分析軸として、高層建築における上下に引き伸ばされた身体や排除される生のかたちを照らし出し、これらの要素がどのように都市環境と相互作用しているのかを探る。

『2022 CCA-WRI Research Symposium』(2022年8月24日、モントリオール)記録映像より

キャスパー・レイン・エベンスゴー/Casper Laing Ebbensgaard

イースト・アングリア大学人文地理学科講師。建築や都市計画を通じて形成される人間と環境の関係を、要素的メディアの視点から研究している。不平等や権力構造が空間に及ぼす影響に注目し、垂直都市、夜間環境、地下空間に関する調査を展開。民族誌的手法を基盤に、アーティストや地域と協働しながら、都市における持続的な共生のかたちを探っている。リーヴァーヒューム・アーリーキャリア・フェローシップ、CCA–WRIリサーチ・フェローシップ等の助成を受けてきた。

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