WINDOW RESEARCH INSTITUTE

連載 小さな建築のような本棚

第2回 窓の本棚

大西麻貴+百田有希(建築家)

01 Apr 2015

「窓の本棚」プロジェクト第2回。私たち窓研究所は建築事務所o+hに、小さな書店やギャラリーなどで、本の全国巡回展を開催するための什器の制作をお願いしました。作品のコンセプトは、“小さな建築のような本棚”です。今回は、大西麻貴さん、百田有希さんからの提案内容を、ご紹介したいと思います。

大西:今日は模型でお見せします。まだ途中ではあるのですが、広がっていって空間を作る「屏風 (びょうぶ) 案」と、「建物案」の2つをデザインしています。

まず、初めに作ったのが、この屏風案です。本棚から折れ戸になったフレームが伸びて、屏風のように広がり、居場所をつくる提案です。屏風自体を格子状の窓のようにつくることで、周りに窓の中と外みたいな居場所が出来るといいなと。あと、模型ではフレームが強くなってしまったので、もう少し繊細につくりたいなと思っています。

こちらが建物案。本棚自体を一つの小さなビルまたは家のようにつくる提案です。棚板は床、側板は壁のようにつくり、そこに扉や窓やオーニングなどがついてきて賑やかになると楽しいですよね。

──本棚というより、たしかに建築っぽい。

大西:なるべくシンプルで構成がよく見える物をつくりたいな。中に何かがつるされていて、窓越しに見えるとか。「そういう使い方しても、かわいいかな」と話をしながらデザインしていました。まだスタディ中で、完全に上手くいってるわけではないですけど、家と本棚の間みたいな感じになるといいなというイメージです。

──たとえば、素材などはどのようなイメージでしょうか。

大西:屏風案だと、多分フレームは金属ですね。

百田:フレームは、スチール系じゃないと難しいでしょうね。金属と木の板の組み合わせみたいな感じになると思います。例えば、何枚かに分割して運搬して、本屋さんについてから組み立てるとか。建物案の方も、半分ずつぐらいにして持ち運べるようにするとか。運べるサイズにしたい。

──展開が広がりますね。これ実際には、どれぐらいのサイズの本が置けるスケールでしょう?

大西:今はどうなんだろう?

百田:どのぐらいのサイズの本を置く想定かというのがありますか?

──国内で窓研究所関連書籍として出版されている5種類の本、これからもう少し増えると思いますけど、それ以外の本をセレクトして置く展開も考えています。

百田:本屋さんによっては、関連して紹介したい本も置いてくださるかもしれないですよね。魅力的な窓が出てくる小説とか、建築系の本とか。

大西:セレクトショップみたいな。

──建築家の方に、いま今読みたい本とか、お奨めしたい本を置くという展開とかもあるのかなと。小物とかでもいいのかも。

百田:本棚自体が一つの世界をつくっているといいですよね。窓に興味を持つ入り口は色々あってよくて、それが窓辺に置きたい植物を買うところからスタートしたっていい。

大西:あるいは、このゾーンは誰々さんの監修ゾーンみたいな。

百田:本棚自体を一つの家と見立てて、外側のテラスには雑貨や小物があって、窓を開けてだんだん中に入って行くと本が置いてあるとか、そういうイメージでつくれたら面白いかも。

──確かにそうかもしれませんね。本棚なのに物語を感じるのは、素敵です。

大西:家にも見えるけど家じゃないくらいの、抽象度がある感じになるといいなと思う。見る人によって、色々な解釈が出来て、例えば「ここにはこんな本を置いてみたい」とか、本屋さんが使いこなしたくなる本棚になったら一番嬉しいな。

──たとえば本屋さんによって、置くスペースが確保できなかった時に、一部分は外してコンパクトに展開できるとか。

大西:それもできると思います。屏風案では折れ戸の枚数を変更したり、建物案では上下分割出来る様にしたり。

──これだけでも空間が成立しそうなので、本屋さんだけではなく展示も考えられそうですね。

大西:屏風案は原寸大の窓辺スペースがパーテーションによってできるみたいな、そんなイメージにつながります。

──座る場所とかも、あわせてつくって。

大西:そうですね。それもいいなと思います。例えばテーブルがあって、椅子があって本も読めるとか、もう少し空間的な展示。もう少し、両方の案を進めてみたいです。そのほうが面白いですよね、どこかで収束すると思うんですけど。

百田:イベントをおこなうスペースで、具体的に想定されている場所はありますか?

──今後の展開の中で、一緒に進行できる方たちを探していきたいなと思っています。展示をおこなう想定の場所としては、賑やかすぎる場所というよりは、ある程度こぢんまりとした規模からスタートさせたいなと考えています。

大西:京都の本屋さんとか。

──そうですね、素敵だと思います。これまでの本棚って、縦方向のイメージが強かったのですが。今回提案いただいた、横方向に連結したり、モノが溢れ出てくるような世界観は、興味深いなと感じています。

大西:あとは、少し組み立て方を変えると少し違うのになるとか。建物案を2棟を立てたときに、少し違う印象に見えるとか。

──このスケールだと、小さい植物とか一緒に置いても似合いそう感じですもんね。

大西:ミニセレクトショップとしての展開とか。窓辺に置くといい植物一緒に売れそう!

百田:この本と一緒に飲んだらいい紅茶…とか。

大西:それ楽しいかも!

──これからどのように展開していきましょうか。

大西:もう少し窓らしさを出していくということ。あと、テーブルが出てきたりとか、座ったり。もう少し場所を作っていく案にしていこうと思います。

百田:もう少し体感的な窓辺みたいな感じかな。

 

次回は、展示の展開方法、場所についても、少しずつ具体的に検討していきます。

 

 

大西麻貴/Maki Onishi 1983年生まれ。京都大学建築学科卒業、東京大学大学院博士課程修了。2013年京都精華大学客員教授、名古屋芸術大学特別客員教授、2013年~横浜国立大学、法政大学非常勤講師。

百田有希/Yuki Hyakuda 1982年生まれ。京都大学建築学科卒業、京都大学大学院修士課程修了。2009~2014年 伊東豊雄建築設計事務所勤務。

2008年より、大西麻貴+百田有希/o+hを協同主宰。建築設計を中心に、インスタレーションやまちづくりまで様々な活動に取り組む。主な作品に「二重螺旋の家」(2011年)、「東松島 こどものみんなの家」(2013年)など。SDレビュー2007鹿島賞、2012年吉岡賞等、受賞多数。 http://onishihyakuda.jp/

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