WINDOW RESEARCH INSTITUTE

連載窓の音と動きの図鑑

擁翠亭
11 床脇の下地窓、12 連子窓と倹飩襖

小宮山洋(プロダクトデザイナー)

05 Dec 2021

Keywords
Design
Product Design

11  床脇の下地窓
床脇の天井近くの高い位置にある下地窓は、他に類例の見られない、この茶室独自の創意で、庭の松の巨木を見上げるためのものだったと考えられている。また上部に滞留する熱気を排出・換気する機能にくわえ、上下左右の窓や天井とのバランスを考えたデザイン的な目的があった事も考えられる。

 

12  連子窓と倹飩襖
連子窓の下辺が畳に接していること、床脇壁の窓の建具が障子ではなく倹飩(けんどん)(枠の上下に溝をつけて上げ落としする扉)の襖であることは擁翠亭独自の創意で、元来、擁翠園の大きな池のほとりに建てられていたので、他の戸襖と同じ様に水面を眺める目的で設定されていると考えられている。倹飩(けんどん)の戸は本来、書院床脇の物入の戸などに使われるものであるが、そうした書院の様式を侘びの茶室に用いたことは遠州の面目躍如ともいえるものである。この戸も他の茶室には一切見られない貴重な遺構である。

 

擁翠亭について
日本の茶室は狭い空間に多くの種類の窓を備えた特殊な建築物である。擁翠亭は、江戸時代前期の寛永年間(一六二四~一六四四)に、加賀藩二代藩主前田利常が、京の装剣金工師で前田家の家臣であった後藤覚乗の屋敷に、上段付きの書院や堂腰掛とともに建てた草庵茶室で、設計は小堀遠州。十三の窓を持つ多窓茶室であったことから、別名を「十三窓席」と言い現存する茶室で最も窓の多い茶室として知られている。本プロジェクトでは、擁翠亭の窓の開閉する音と動きを観察し、十三窓の繊細で豊かな振る舞いを抽出することを目的としている。

 

 

窓の音と動きの図鑑
「窓」の開閉する「音」と「動き」を観察・抽出し、私たちが耳や目で「窓」をどのように認知しているのかを解き明かす取り組み。「窓の音と動きの図鑑」は「Window Products Inside」の最初となるリサーチプロジェクトで、プロダクトデザイナー小宮山洋窓研究所の協働で行われており、映像表現を岡崎智弘が作りあげている。

 

Window Products Inside
プロダクトデザイナー 小宮山洋によるリサーチプロジェクト。「窓」そのものに内包されている意味を抽出し再定義することで、多様な生活文化や新しい習慣を作り出す「窓」の鍵となるものを探す。
windowproductsinside.com

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