Grant Results 2024年度 採択テーマ CCA-WRI Research Fellowship
Mediating Light:
The Architectures of Photographic Production
写真製造における建築と光の関係
31 Mar 2025
- Keywords
- Architecture
- CCA-WRI
- Photography
公益財団法人 窓研究所は、カナダ建築センター(Canadian Centre for Architecture)と共同でフェローシップ・プログラム「CCA-WRI Research Fellowship」を実施しています。本記事は、2024年度リサーチフェローのひとりであるエミリー・ドーセ氏の研究テーマを紹介するものです。
研究テーマ概要
本研究は、写真材料の分野で世界的な影響力を持つイーストマン・コダック社の建築とインフラに焦点を当てるものである。カナダ、アメリカ、イギリス、オーストラリアに所蔵されているコダック関連資料(Kodak fonds)に基づくアーカイブ調査を通じて、写真用品の製造工場の設計に関する歴史的・構造的考察を行う。
さらに、建築およびインフラの類型に基づいた分析を通して、コダックの商業的成功、そしてその製品が世界中に広く普及した背景にある、素材、化学薬品、労働力、通信システム、輸送インフラ、法制度、貿易方針といった多様な要素が複雑に絡み合った構造を明らかにすることを目的とする。
これまで、写真と建築の関係は、主に写真家が建築や都市環境をどのように記録してきたかという視点から語られてきた。しかし、写真のための建築もまた、確かに存在する。光に反応するフィルムや印画紙を製造する工場、現像に用いる薬品を精製する施設、プロおよびアマチュア写真家が撮影したフィルムやプリントを処理するラボ、さらには企業利益を背景に建設された壮麗な本社ビルなど、写真産業はその活動を支えるために多様な建築を生み出してきた。
設計図、ランドスケープ・デザイン、建築許可証といった一次資料を手がかりに、「写真的資本主義」の歴史を建築の側から読み解くとともに、写真産業の地政学的展開を追跡する本研究は、メディア産業がもたらす環境負荷をめぐる近年の議論とも深く呼応するものである。
『Energy Always: 2024 CCA-WRI Research Symposium』(2024年8月7日、モントリオール)記録映像より
エミリー・ドーセット/Emily Ducet
ティオティアケ/モントリオールを拠点に、作家、編集者、そして写真およびヴィジュアル文化の歴史研究者として活動。2020年にトロント大学で美術史の博士号を取得後、ドイツ・エッセン高等研究所(2021年)、マギル大学アート・ヒストリー&コミュニケーション・スタディーズ学部(2022年〜2023年)、トロント・メトロポリタン大学イメージ・センターのフェローとして研究を継続。2024年には、CCA-WRIフェローとしてカナダ建築センターに滞在。
メディア技術の歴史と視覚文化、とりわけ写真を主なテーマに研究と執筆活動を展開。初の著書『Inventing Nadar: A History of Photographic Firsts(ナダールを生み出す——写真における原初の歴史)』は、2026年にデューク大学出版局より刊行予定。歴史的および現代の文化を扱ったエッセイ、インタビュー、レビューは、BlackFlash、Border Crossings、C Magazine、Canadian Art、Communication + 1、Grey Room、Lady Science、Public Parking、Transbordeur: photographie, histoire, société など、多様な媒体に掲載されている。
主な研究助成として、アソシエーション・フォー・アート・ヒストリー、カナダ建築センター、大英図書館エクルズ・アメリカ研究センター、ドイツ・エッセン高等研究所、ノースロップ・フライ・センター、ポール・メロン英国美術史センター、カナダ社会・人文科学研究会議(SSHRC)、およびイメージ・センターなどからの支援を受けている。
