WINDOW RESEARCH INSTITUTE

FELLOWSHIP

CCA-WRI Research Fellowship 2024

31 Jul 2023

 
公益財団法人窓研究所は、カナダ建築センター(Canadian Centre for Architecture, CCA)と共同で「CCA-WRI Research Fellowship」を実施しています。本フェローシップは、公募により選出されたリサーチフェローが、CCAの所蔵コレクションを活用し、公募テーマに沿って自身の研究を発展させることを支援するプログラムです。2022年度から2024年度にかけて実施されたプログラムの第1期「CCA-WRI Research Fellowship 2022–2024」では、“Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet”を共通テーマとし、毎年3名、計9名のリサーチフェローを採択しました。2024年度にはプログラム3回目となる派遣を行いました。

 

2024年度 採択者および採択テーマ

氏名(所属) エミリー・ドーセット(マギル大学)
タイトル Mediating Light: The Architecture of Photographic Production

氏名(所属) ギョクチェ・ギュネル(ライス大学)
タイトル All of the Above: A Global Future of Energy

氏名(所属) 中本 陽介(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)
タイトル Salt and Land: Shifting Territories of the Salt Production Sites in the Seto Inland Sea

2024年度 公募概要 「Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet」

生態系の危機が叫ばれる現代において、光が多様な意味を持つ建築的な媒介であるということは、カナダ建築センターと窓研究所の双方に共通した認識です。この危機的な生態系の実態が、“Above”、“Below”、“Between”、つまり私たちの周りの大気や地下で壊れゆく風景に対して、新たな取り組みやデザイン、そしてこれまでにない建築設計の社会的・物質的な表現を創造しています。平均気温の上昇、度重なる干ばつ、海面上昇を通じて、この壊れゆく惑星の光は人間が影響を与えた生態系に著しく反応しています。開口部はこの光の源を凝縮し、生態系が抱える課題の根本的な原因を探る必要性を感じさせます。
この共通の理解からカナダ建築センターと窓研究所が協働し、光という現象について探求するための機会を創設しました。カナダ建築センターが建築の広範なテーマに着目する一方、窓研究所は技術的・文化的・社会的な視点で光と窓に着目しており、この協働はカナダ建築センターにとって新たなフェローシップのモデルとなりました。

 

今回が第3回でプログラム第1期の最終回となる「CCA-WRI Research Fellowship」は、前期に引き続き、光スペクトルの構成材料と建築との多様な関係を理解することを目的にしています。これまでと同様に2024年も3名の研究員を迎え、最長3ヵ月間の研究にあたっていただきます。研究員には、太陽系社会に光を拡散する第3の要素である“between”と、光がどのように建築環境を形成しており、また建築環境によって形成されるかという、日常的な条件に注目していただきます。

 

ここで言う“between”とは、大気と陸地の間に現れる一連の現象と、太陽に依存する環境としての地球の状態を反映するものを指します。例えば、地球全体の大気汚染レベルの増加と、そのために地方都市や大都市における日々の人間活動に生じる重大な問題のことです。さらに“between”には、炭素燃焼や工業生産、森林火災による化学的影響が含まれます。大気汚染が生じたことで、公共交通機関への投資からグリーン産業技術に至るまで、あらゆる緩和策が広く講じられるようになりました。

 

同様に、窓が地理的・気候的な条件を横断しながら、社会、生態、政治の閾値をナビゲートする開口部としての役割を果たすことで、“between”が生じます。「CCA-WRI Research Fellowship」は、“between”が建築環境というスケールを横断しながら、大気汚染の指標や、公共交通機関への投資拡大に対する政治的・社会的抵抗、水路と人間の居住地との境界を再構成するハリケーンといった大規模な気象現象など、居住に係る共通の現象を通して、建築環境をひとつなぎにする条件であることを示す、発想力豊かで野心的な論理を持つアプローチを募集します。本プログラム最終回である今回は、“between”がエネルギー資源であると同時に実存的な熱の脅威の源であり、地球の気候条件に対する生態学的な閾値である太陽によって定められる「太陽の景観」となりうるかを定義し、探求し、見通しを立てることにとりわけ重点を置きます。

 

さらに今回の募集では、資源循環、都市の間隙生態系、建築環境と都市変遷の関係性などを含む時間的・空間的条件との間の橋渡しとなる“between”に対する、より比喩的で概念的なアプローチも歓迎します。本プログラムの研究員は、カナダ建築センターが所蔵する資料を閲覧しながら調査を行うことができます。カナダ建築センターには、建築家ダグラス・ケルボウらによる最初期の太陽エネルギーを設計に取入れた作品や、環境の回復に関係するプロジェクトに焦点を当てたイタリアの建築家・芸術家ジャンニ・ペテナの全作品、そしてランドスケープアーキテクトのコーネリア・ハーン・オーバーランダーによって実現された、高い次元で大気汚染やその他の汚染の未来を予見するプロジェクトに関するものなどの資料が収蔵されています。

 

2024年度の研究員には、交通拠点、汚染、動的生態系、政治的な閾値としての開口部が結びつく、流動的な場としての“between”に着目することが期待されます。また本プログラムの前二期と同様に、壊れゆく光と太陽光線をより社会的な条件として捉え、新たな視点で研究することを目的とした、以下の一連のテーマについても研究プロジェクトを募集します。

 

– 大気汚染、健康の決定要因、建築環境/自然環境
– 公共交通機関を中心とした都市形成(密度、気候、不動産などとの関連)
– 地域を越えた生態系
– 地球温暖化に関連する気候現象とその建築環境/自然環境への影響
– 窓とその物質性の政治化
– 太陽エネルギーを利用する建築設計
– 社会的資本としての光
– 太陽が支配する地域、乾燥地、荒地、砂漠などでの景観
– 歴史的、地理的、社会的プロセスとしての自然光、人工光
 
※2024年度公募は締め切りました。ご応募ありがとうございました。
 

フォローシップ設立の背景

1979年の設立以来、カナダ建築センター(CCA)は、研究機関として新たな知を構築するだけでなく、それを社会の中で有効に活用することを目指し、展示、出版、パブリックイベント、研究プログラムといった多様な活動を通じて、建築分野における幅広い研究の機会を生み出してきました。
さらに、建築的視点を他分野に応用する試みや、建築分野への学際的なアプローチの推進、キュレーション・出版・学術研究から生まれる文化や視点の融合を通じて、独自の研究実践を展開しています。

窓研究所は、過去10年以上にわたり「窓」をテーマに、さまざまな学術的・文化的プログラムを展開してきました。採光、通風、換気、眺望、防犯、省エネといった多様な機能を担う窓は、技術の結節点であると同時に、建築を特徴づける基本的な要素のひとつでもあります。また、内外部の環境をつなぐ存在として、建築にとどまらず、気候風土や人々の生活習慣とも深く関わっています。
窓研究所では、こうした窓の多面的な役割に着目し、それを社会・文化・技術の様相を映し出すものとして読み解くことで、建築と建築文化への理解の深化を図っています。

本フェローシップ・プログラムは、CCAの包括的な知見と窓研究所のユニークな研究テーマを掛け合わせ、機関の枠を超えて現代社会の諸課題に取り組むことを目的に設立されました。
 

2024年度 選考委員 塚本由晴(アトリエ・ワン/東京工業大学大学院教授)
篠原雅武(京都大学大学院総合生存学館[思修館]特定准教授)
ダニエル・バーバー(シドニー工科大学建築学部学部長)
ジョバンナ・ボラーシ(カナダ建築センター館長)
ラフィコ・ルイス(リサーチ部門アソシエイトディレクター)

カナダ建築センターの所蔵コレクション

カナダ建築センターは設立以来、アーネスト・コーミア ・アーカイブなど、建築アーカイブの収集に力を入れてきました。その方針は2000年代初期により強化され、ゴードン・マッタ゠クラーク、セドリック・プライス、アルドロッシ、ジェームズ・スターリングのアーカイブをコレクションに加えました。その後も、アルヴァロ・シザ、アバロス・エレロス、FOA、ケネス・フランプトンといった現代建築家や建築史家の、歴史的に非常に重要なアーカイブを所蔵しています。また「デジタル考古学」の研究プログラムに関するコレクションなど、デジタル建築の作品も収集・所蔵しています。詳細はカナダ建築センターウェブサイト「Guide to archival holdings」をご覧ください。

カナダ建築センター|Canadian Centre for Architecture

カナダ建築センターは、建築は広く社会の関心事であるという認識を前提にグローバルに活動する研究機関です。建築が現代の生活をどのように形づくり、つくり変えていくのかという好奇心を原動力に、展覧会、出版、学術研究、アーカイブ収集、パブリックプログラムなど、多様な事業を展開しています。機関内に留まらず、外部研究者や一般の方々を巻き込みながら、建築的視野をもって現代社会における学問的・文化的課題に取り組んでいます。

cca.qc.ca

公益財団法人 窓研究所|Window Research Institute

窓研究所は、窓を起点に研究事業・文化事業を展開する公益財団法人です。過去10年以上にわたり、窓という研究テーマにおける知見を通じ、従来とは異なる視点から建築を捉えることで、社会において建築が果たす役割を探求してきました。関連分野における研究調査の実施、助成、出版・展示・講演等による研究成果の公表を事業の柱に、建築のみならず、多分野で活躍する国内外の機関や個人と連携しながら、複眼的な議論の発展を目指し活動を推進しています。
madoken.jp