WINDOW RESEARCH INSTITUTE

FELLOWSHIP

CCA-WRI Research Fellowship 2024

31 Jul 2023

窓研究所は、カナダ建築センターと共同で3ヶ年のフェローシッププログラム「CCA-WRI Research Fellowship」を実施しており、2024年度に第3期派遣を行います。

 

本プログラムでは、カナダ建築センターの所蔵コレクションを通して現代社会における諸問題と建築との関係性を探る研究課題に取り組んでいただくことを目的に、研究者、建築家、学芸員など、高度な専門知識や卓越した実績を有する国内外の人材を公募で選出し、CCA-WRIフェローとして約3ヶ月間、カナダ・モントリオールの同センターへ派遣します。対象者には、滞在費、渡航費等を一部支給します。

 

第3期研究員の募集は2023年10月9日(月)まで、カナダ建築センターポータルサイトにて受け付けています。

CCA-WRI Research Fellowship 2024
Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet

研究テーマ

生態系の危機が叫ばれる現代において、光が多様な意味を持つ建築的な媒介であるということは、カナダ建築センター(英: Canadian Centre for Architecture; CCA)と窓研究所(英: Window Research Institute; WRI)双方に共通した認識です。この危機的な生態系の実態が、“Above”、“Below”、“Between”、つまり私たちの周りの大気や地下で壊れゆく風景に対して、新たな取り組みやデザイン、そしてこれまでにない建築設計の社会的・物質的な表現を創造しています。平均気温の上昇、度重なる干ばつ、海面上昇を通じて、この壊れゆく惑星の光は人間が影響を与えた生態系に著しく反応しています。開口部はこの光の源を凝縮し、生態系が抱える課題の根本的な原因を探る必要性を感じさせます。
この共通の理解からカナダ建築センターと窓研究所が協働し、光という現象について探求するための機会を創設しました。カナダ建築センターが建築の広範なテーマに着目する一方、窓研究所は技術的・文化的・社会的な視点で光と窓に着目しており、この協働はカナダ建築センターにとって新たなフェローシップのモデルとなりました。

 

今回が第3期で最終回となる「CCA-WRI Research Fellowship」は、前期に引き続き、光スペクトルの構成材料と建築との多様な関係を理解することを目的にしています。これまでと同様に2024年も3名の研究員を迎え、最長3ヵ月間の研究にあたっていただきます。研究員には、太陽系社会に光を拡散する第3の要素である“between”と、光がどのように建築環境を形成しており、また建築環境によって形成されるかという、日常的な条件に注目していただきます。

 

ここで言う“between”とは、大気と陸地の間に現れる一連の現象と、太陽に依存する環境としての地球の状態を反映するものを指します。例えば、地球全体の大気汚染レベルの増加と、そのために地方都市や大都市における日々の人間活動に生じる重大な問題のことです。さらに“between”には、炭素燃焼や工業生産、森林火災による化学的影響が含まれます。大気汚染が生じたことで、公共交通機関への投資からグリーン産業技術に至るまで、あらゆる緩和策が広く講じられるようになりました。

 

同様に、窓が地理的・気候的な条件を横断しながら、社会、生態、政治の閾値をナビゲートする開口部としての役割を果たすことで、“between”が生じます。「CCA-WRI Research Fellowship」は、“between”が建築環境というスケールを横断しながら、大気汚染の指標や、公共交通機関への投資拡大に対する政治的・社会的抵抗、水路と人間の居住地との境界を再構成するハリケーンといった大規模な気象現象など、居住に係る共通の現象を通して、建築環境をひとつなぎにする条件であることを示す、発想力豊かで野心的な論理を持つアプローチを募集します。本プログラム最終回である今回は、“between”がエネルギー資源であると同時に実存的な熱の脅威の源であり、地球の気候条件に対する生態学的な閾値である太陽によって定められる「太陽の景観」となりうるかを定義し、探求し、見通しを立てることにとりわけ重点を置きます。

 

さらに今回の募集では、資源循環、都市の間隙生態系、建築環境と都市変遷の関係性などを含む時間的・空間的条件との間の橋渡しとなる“between”に対する、より比喩的で概念的なアプローチも歓迎します。本プログラムの研究員は、カナダ建築センターが所蔵する資料を閲覧しながら調査を行うことができます。カナダ建築センターには、建築家ダグラス・ケルボウらによる最初期の太陽エネルギーを設計に取入れた作品や、環境の回復に関係するプロジェクトに焦点を当てたイタリアの建築家・芸術家ジャンニ・ペテナの全作品、そしてランドスケープアーキテクトのコーネリア・ハーン・オーバーランダーによって実現された、高い次元で大気汚染やその他の汚染の未来を予見するプロジェクトに関するものなどの資料が収蔵されています。

 

2024年の研究員には、交通拠点、汚染、動的生態系、政治的な閾値としての開口部が結びつく、流動的な場としての“between”に着目することが期待されます。また本プログラムの前二期と同様に、壊れゆく光と太陽光線をより社会的な条件として捉え、新たな視点で研究することを目的とした、以下の一連のテーマについても研究プロジェクトを募集します。

 

– 大気汚染、健康の決定要因、建築環境/自然環境
– 公共交通機関を中心とした都市形成(密度、気候、不動産などとの関連)
– 地域を越えた生態系
– 地球温暖化に関連する気候現象とその建築環境/自然環境への影響
– 窓とその物質性の政治化
– 太陽エネルギーを利用する建築設計
– 社会的資本としての光
– 太陽が支配する地域、乾燥地、荒地、砂漠などでの景観
– 歴史的、地理的、社会的プロセスとしての自然光、人工光

 

プログラム概要

本プログラムのフェローには、2024年6月から10月の間に1〜3ヶ月間、カナダ建築センターに滞在していただきます。各フェローにはプライベートオフィス、月額5,000CADの支給金、旅費が支給されます。また、カナダ建築センターで行われる研究者の公開プレゼンテーション、ディスカッション、セミナー、ワークショップに参加し、同センターのスタッフとの交流、地元の学術・建築コミュニティとの関わりを持つことが期待されます。

 

審査員

– 篠原雅武 (京都大学大学院総合生存学館[思修館]特定准教授)
– 塚本由晴(アトリエ・ワン/東京工業大学大学院教授)
– ダニエル・バーバー(シドニー工科大学建築学部学部長)
– ジョバンナ・ボラーシ (カナダ建築センター館長)
– ラフィコ・ルイス (リサーチ部門アソシエイトディレクター)

 

採択者

氏名(所属) Emily Doucet(マギル大学)
タイトル Mediating Light: The Architecture of Photographic Production

氏名(所属) Gokce Gunel(ライス大学)
タイトル Energy Accumulation

氏名(所属) Yosuke Nakamoto(Staufer Hasler Architekten/スイス連邦工科大学チューリッヒ校)
タイトル Salt and Light: The Dialectic of Saltʼs Regulating and Transformative Force on the Territory

 

フォローシップ設立の背景

1979年の設立以来、カナダ建築センターは、研究機関として新たな知識を構築するだけでなく、構築した知識を有効に活用することを目指し、展示事業、出版事業、パブリックイベント、研究プログラム等の実施を通じて、建築分野における幅広い研究機会を創出してきました。さらには、建築的視点の他分野への適用を試みるとともに、建築分野への学際的なアプローチを推進するほか、建築領域にキュレーションや出版、学術研究から生まれる文化と視点を融合することで、独自の研究活動を実践しています。

 

窓研究所は、過去10年以上にわたり窓をテーマにさまざまな学術的・文化的プログラムを展開してきました。採光、通風、換気、眺望、防犯、省エネなど多くの役割を担う窓は、多様な技術の結節点であるとともに、建築を特徴づける基本要素のひとつでもあります。さらには内外部環境の接点として、建築のみならず、その周囲における気候風土や人々の生活習慣とも密接な関わりを持っています。このように、窓研究所では窓を社会、文化、技術の様相を反映するものとして捉え、多面的に読み解くことで、建築と建築文化への理解を一層深めることを目指し活動しています。

 

本プログラムは、カナダ建築センターの包括的な知見と窓研究所のユニークな研究テーマを掛け合わせ、機関横断的に現代社会の諸問題に取り組むことを目的に設立されました。

 

カナダ建築センターの所蔵コレクション

カナダ建築センターは設立以来、アーネスト・コーミア ・アーカイブなど、建築アーカイブの収集に力を入れてきました。その方針は2000年代初期により強化され、ゴードン・マッタ゠クラーク、セドリック・プライス、アルドロッシ、ジェームズ・スターリングのアーカイブをコレクションに加えました。その後も、アルヴァロ・シザ、アバロス・エレロス、FOA、ケネス・フランプトンといった現代建築家や建築史家の、歴史的に非常に重要なアーカイブを所蔵しています。また「デジタル考古学」の研究プログラムに関するコレクションなど、デジタル建築の作品も収集・所蔵しています。詳細はカナダ建築センターウェブサイト「Guide to archival holdings」をご覧ください。

 

カナダ建築センター|Canadian Centre for Architecture

カナダ建築センターは、建築は広く社会の関心事であるという認識を前提にグローバルに活動する研究機関です。建築が現代の生活をどのように形づくり、つくり変えていくのかという好奇心を原動力に、展覧会、出版、学術研究、アーカイブ収集、パブリックプログラムなど、多様な事業を展開しています。機関内に留まらず、外部研究者や一般の方々を巻き込みながら、建築的視野をもって現代社会における学問的・文化的課題に取り組んでいます。

cca.qc.ca

公益財団法人 窓研究所|Window Research Institute

窓研究所は、窓を起点に研究事業・文化事業を展開する公益財団法人です。過去10年以上にわたり、窓という研究テーマにおける知見を通じ、従来とは異なる視点から建築を捉えることで、社会において建築が果たす役割を探求してきました。関連分野における研究調査の実施、助成、出版・展示・講演等による研究成果の公表を事業の柱に、建築のみならず、多分野で活躍する国内外の機関や個人と連携しながら、複眼的な議論の発展を目指し活動を推進しています。
madoken.jp

 

本プログラムに関する問い合わせ

Canadian Centre for Architecture
studium@cca.qc.ca
※英語・仏語のみ受付

 

取材・掲載に関するお問い合わせ

Julia Albani
International Press and Public Relations
Canadian Centre for Architecture
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