※2023年度公募は締め切りました。ご応募ありがとうございました。
公益財団法人窓研究所は、カナダ建築センター(Canadian Centre for Architecture, CCA)と共同で「CCA-WRI Research Fellowship」を実施しています。本フェローシップは、公募により選出されたリサーチフェローが、CCAの所蔵コレクションを活用し、公募テーマに沿って自身の研究を発展させることを支援するプログラムです。2022年度から2024年度にかけて実施されたプログラムの第1期「CCA-WRI Research Fellowship 2022–2024」では、“Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet”を共通テーマとし、毎年3名、計9名のリサーチフェローを採択しました。2023年度にはプログラム第1期の2回目となる派遣を行いました。
2023年度 採択者および採択テーマ
氏名(所属) | アンドレア・アルベルト・ドゥット(アーヘン工科大学) |
---|---|
タイトル | Earth-Shelter Builders and the Code |
|
氏名(所属) | オクサナ・グリノヴィッチ(アーヘン工科大学) |
タイトル | The Under- and Overground Built Environments of the Soviet-German Uranium Mining Corporation Wismut |
|
|
氏名(所属) | 宮田 智美(東京工業大学) |
タイトル | Visual Function in Earth shelters from the viewpoint of emergency sustainability |
2023年度 選考委員 塚本由晴(アトリエ・ワン/東京工業大学大学院教授)
キム・ジョンユン(PARKKIM/ハーバード大学デザイン大学院「Practices of Landscape Architecture」助教授)
ジョバンナ・ボラーシ(カナダ建築センター館長)
ラフィコ・ルイス(リサーチ部門アソシエイトディレクター)
2023年度 公募概要 「Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet」
生態系の危機が一層顕著になる中で、光の多様な意味と建築的な媒介の認識は、CCAと窓研究所にとって共通したものです。平均気温の上昇、干ばつパターンの、海面上昇など、壊れゆく惑星のあかりは、人間が影響を及ぼした生態系に重大に反応しているのです。絞り、つまり開口部は、この光源とその根本的な原因を問う必要性を凝縮し、目に見えるものにします。
このような共通項から、窓研究所とCCAは協力して、光という現象を深く探究するための機会を提供することになりました。CCAが建築のさまざまなテーマを常に観察しているのに対し、WRIは技術的、文化的、社会的な側面から光と窓に特別な焦点をあてています。
2回目となる「CCA-WRI Research Fellowship Program Above/Below/Between: Light on a Damaged Planet」は、引き続き、近年変化しつつある光スペクトルの構成材料と建築との多様な関係を理解することを目的にしています。2023年度は3名のフェローを迎え、最長3ヶ月間の研究を行います。フェローは、太陽系社会の光の拡散の第2の要素 below −光の少ない地下−に目を向けます。商業空間からデータストレージ、戦争や気候変動・災害に対する安全性まで、地下空間のデザインは現在進行形の関心事でもあります。CCAは、ミネソタ大学の地下空間センター(USC)に関連するユニークな資料コレクションを所蔵しています。1978年に設立されたUSCは、1970年代の石油危機と、家庭環境の冷暖房をより効率的に行う手段の必要性への対応として、「アースシェルター」の研究に専念していました。これは、CCAコレクションの多様な資料の中でも、現代の太陽熱による被害がどのようにデザインの歴史に影響を及ぼしているかを明確にするための導入のひとつとなるものです。
2023年度の派遣者は、実験空間、未来の家庭空間、あるいは抽出としての地下空間に焦点を当てますが、様々なテーマ、特に社会状況としての壊れゆくあかりとソラリティというテーマをより広く新しい方向へ導くような応募を歓迎します。
– 地下と拡大された「シェルター」の定義
– アンダーグラウンド・アーバニズム(密度、気候、不動産投機)
– アンダーグラウンドと反垂直性
– 地下空間と郷愁/廃止/避難/違法
– ソーラーデザイン、特に素材としてのソーラー
– ソーシャル・キャピタルの一形態としての光
– ソーラー・ランドスケープ(乾燥、不毛、砂漠)
– 歴史的、地理的、社会的プロセスとしてのルミネセンス
派遣者は2023年6月から10月の間に、1〜3ヶ月間CCAに滞在することができます。各派遣者には、個室が提供され、月額5000CADが支給されるほか、旅費も支給いたします。また、進行中の研究者の公開プレゼンテーションに加えて、CCAで開催されるディスカッション、セミナー、ワークショップに参加し、CCAのスタッフとの交流、地元の学術・建築コミュニティと関わりを持つことが期待されています。
プログラムの設立背景 1979年の設立以来、カナダ建築センターは、研究機関として新たな知識を構築するだけでなく、構築した知識を有効に活用することを目指し、展示事業、出版事業、パブリックイベント、研究プログラム等の実施を通じて、建築分野における幅広い研究機会を創出してきました。さらには、建築的視点の他分野への適用を試みるとともに、建築分野への学際的なアプローチを推進するほか、建築領域にキュレーションや出版、学術研究から生まれる文化と視点を融合することで、独自の研究活動を実践しています。
窓研究所は、過去10年以上にわたり窓をテーマにさまざまな学術的・文化的プログラムを展開してきました。採光、通風、換気、眺望、防犯、省エネなど多くの役割を担う窓は、多様な技術の結節点であるとともに、建築を特徴づける基本要素のひとつでもあります。さらには内外部環境の接点として、建築のみならず、その周囲における気候風土や人々の生活習慣とも密接な関わりを持っています。このように、窓研究所では窓を社会、文化、技術の様相を反映するものとして捉え、多面的に読み解くことで、建築と建築文化への理解を一層深めることを目指し活動しています。
本プログラムは、カナダ建築センターの包括的な知見と窓研究所のユニークな研究テーマを掛け合わせ、機関横断的に現代社会の諸問題に取り組むことを目的に設立されました。
カナダ建築センターの所蔵コレクション
カナダ建築センターは設立以来、アーネスト・コーミア ・アーカイブなど、建築アーカイブの収集に力を入れてきました。その方針は2000年代初期により強化され、ゴードン・マッタ゠クラーク、セドリック・プライス、アルドロッシ、ジェームズ・スターリングのアーカイブをコレクションに加えました。その後も、アルヴァロ・シザ、アバロス・エレロス、FOA、ケネス・フランプトンといった現代建築家や建築史家の、歴史的に非常に重要なアーカイブを所蔵しています。また「デジタル考古学」の研究プログラムに関するコレクションなど、デジタル建築の作品も収集・所蔵しています。詳細はカナダ建築センターウェブサイト「Guide to archival holdings」をご覧ください。
カナダ建築センター|Canadian Centre for Architecture
カナダ建築センターは、建築は広く社会の関心事であるという認識を前提にグローバルに活動する研究機関です。建築が現代の生活をどのように形づくり、つくり変えていくのかという好奇心を原動力に、展覧会、出版、学術研究、アーカイブ収集、パブリックプログラムなど、多様な事業を展開しています。機関内に留まらず、外部研究者や一般の方々を巻き込みながら、建築的視野をもって現代社会における学問的・文化的課題に取り組んでいます。
cca.qc.ca
公益財団法人 窓研究所|Window Research Institute
窓研究所は、窓を起点に研究事業・文化事業を展開する公益財団法人です。過去10年以上にわたり、窓という研究テーマにおける知見を通じ、従来とは異なる視点から建築を捉えることで、社会において建築が果たす役割を探求してきました。関連分野における研究調査の実施、助成、出版・展示・講演等による研究成果の公表を事業の柱に、建築のみならず、多分野で活躍する国内外の機関や個人と連携しながら、複眼的な議論の発展を目指し活動を推進しています。
madoken.jp
CCA-WRI Research Fellowship 2022
カナダ建築センター+窓研究所
CCA-WRI Research Fellowship 2024
カナダ建築センター+窓研究所