正田智樹(研究者)

Tomoki Shoda (Researcher)

1990年千葉県生まれ。転勤族の父と共に、フランス、インドネシア、中国、ベルギーを高校卒業まで転々と移り住む。2014-15年には東京工業大学塚本由晴研究室にて「WindowScape3 -窓の仕事学」で日本全国の伝統的なものづくりの工房の調査を行う。2016-17年イタリアミラノ工科大学留学。現地ではSlow Foodに登録されるイタリアの伝統的な食品を建築の視点から調査。2017年東京工業大学建築学専攻修士課程修了。2017-18年Slow Food Nippon 調査員として、日本の伝統的食品生産を調査。2018年-現在、竹中工務店設計部在籍。

June 19, 2018

第1回 ヴェッサーリコ村のニンニクの窓

さんさんと降り注ぐ太陽の下で育てられるレモン、カビを生やすことで芳醇な風味に熟成される生ハム、風通しのよいパーゴラの下で育てられる葡萄からつくられるワイン。魅力的なイタリアの食べ物がつくられる風景には、パーゴラや熟成室など各地域独特の建築がみられる。イタリアの食べ物は、このような地域特有の気候や地理を活かした建築との関わりのなかで生み出されているのではないだろうか。そんな問いを持ったことから、私は2016年2月から一年間イタリアに留学し、食と建築の調査を行なった。その際に研究対象としたのが、スローフードによって保護される伝統的食品群だ。

スローフードは、1986年にローマのスペイン広場にマクドナルドが開店する際に、イタリアの食文化が失われることを危惧して反対運動が起きたことを発端に、ワイン・フードジャーナリストであったカルロ・ペトリーニによって立ち上げられた団体である。ペトリー二は、自著の冒頭で以下のように述べている。「ガストロノモ(美食家)とは感性を研ぎ澄まし自分の舌を肥やすことから、その食べ物がどんなものでどのように作られたかまでを視野に入れている人間なのである。」

スローフードは、伝統的、地域的な食文化が失われてしまうことを危惧し、指定した食品にロゴマークをつけることで市場に流通させやすくする保護活動や、生産者や料理人、消費者のネットワークをつくる活動を行なっている。今回の研究対象としたワインやチーズ、生ハム、野菜、果物などのスローフードに登録される食品は、光や熱、風、冷気や湿気などの地域特有の気候や地理的条件といった身の回りの自然を活かしながら生産されている。

そこで、このコラムのシリーズでは研究事例の中から気候や地形と密接に関わる建築部位である窓に着目し、スローフードに登録される地域固有の伝統食のおいしさと、身の回りの自然を活用する窓との関係に迫る。

 

今回はその中からイタリア北部のピエモンテ州に位置するヴェッサーリコ村のニンニクの生産に関わる窓について紹介したい。