WINDOW RESEARCH INSTITUTE

Grant Results 2024年度 採択テーマ CCA-WRI Research Fellowship

All of the Above: A Global Future of Energy
すべてを選ぶ、エネルギーの未来

ギョクチェ・ギュネル

31 Mar 2025

Keywords
CCA-WRI
Energy

公益財団法人 窓研究所は、カナダ建築センター(Canadian Centre for Architecture)と共同でフェローシップ・プログラム「CCA-WRI Research Fellowship」を実施しています。本記事は、2024年度リサーチフェローのひとりであるギョクチェ・ギュネル氏の研究テーマを紹介するものです。

 

 

研究テーマ概要

本研究は、グローバルなエネルギー産業の関係者たちが、「すべてを選ぶ(all of the above)」という解決策──すなわち、他のエネルギーインフラと並行して化石燃料インフラの必要性を訴えることで、エネルギーの公正を確保しようとする構想──を通じて、エネルギーの未来をいかに捉えているかを明らかにする出版プロジェクトの一環となるものである。同書では、ガーナにおけるカルパワー社の浮体式発電所に加え、太陽光発電所や電気自動車(EV)の事例を通じて、「すべてを含む」アプローチがグローバル・サウスにおいてどのように可視化されているかを検討する。エネルギー専門家たちがこのような複合的解決策を積極的に構築している実態を示すことにより、本プロジェクトは、エネルギーインフラを「進歩」や「移行」といった直線的な時間軸で捉える従来の見方に対する批判的視座を提示する。

CCA-WRIが掲げる「間にある状態(between conditions)」というテーマに応えるかたちで、私は、発電船のような一時的電力インフラが、導入地域における長期的な発展や直線的進歩の可能性を前提として、いかに資本として機能してきたかを論じた。こうした設備は、将来的に撤去され、脱化石燃料時代の到来をもたらす暫定的措置として位置づけられてきた。その形態的特徴も、未来への移行を示唆する証拠として用いられてきた。しかし実際には、それらに関わる契約は国の送電網との長期的な接続を前提とするものであり、暫定であるはずの期間を引き延ばし、クリーン技術への移行を先送りにしている。発電企業は、この宙づりの状態をできる限り長く維持するために、経済的・政治的に深く関与し、導入国の資源を吸収しながら、自らの技術が不要となる時代の到来を遅らせている。すなわち、一時的な電力設備は、「引き延ばしの技術(technology of deferral)」として機能しているのである。私の研究は、なぜ「一時的」であるはずのものが、進歩を遅らせる技術へと変貌したのかを問い直すものである。そしてさらに重要なのは、このような暫定的装置の拡散が、エネルギーおよび気候変動のグローバルな将来にいかなる意味をもたらすのか、という問いである。

『Energy Always: 2024 CCA-WRI Research Symposium』(2024年8月7日、モントリオール)記録映像より

ギョクチェ・ギュネル/Gökçe Günel

ライス大学文化人類学准教授。エネルギーや気候変動に関連する課題のもとで、インフラがいかに変容するかを主な研究対象としている。著書に『Spaceship in the Desert: Energy, Climate Change and Urban Design in Abu Dhabi』(Duke University Press, 2019)があり、アラブ首長国連邦における再生可能エネルギーおよびクリーンテクノロジーのインフラ整備、とりわけマスダール・シティ計画に焦点を当てている。まもなく刊行予定の民族誌的モノグラフ『All of the Above: A Global Future of Energy』では、ガーナに導入されたトルコ製の浮体式発電所を事例に、エネルギー移行に関する語りの構造を分析している。共著に「A Manifesto for Patchwork Ethnography」(2020)があり、「パッチワーク型民族誌」研究の共同主宰者を務める。

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