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庭園美術館の窓

山本憲資(Sumally)

09 Mar 2015

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Architecture
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Sumally (サマリー) 』とは、“Want(欲しい)”、“Have(持っている)”の2つでモノを分類していく「この世界に存在するすべてのモノの”百科事典”」をコンセプトに誕生した、ソーシャルネットワーキングサービスだ。そのSumallyの立ち上げ人でCEOの山本憲資氏は、ファッションカルチャー誌で編集者として活躍した経歴を持つ。現在でもトレンドカルチャーを体感することは欠かさない山本氏が、2014年11月にリニューアルオープンした東京都庭園美術館に足を運んだ。アール・デコ様式の建築が生み出す、窓と光の関係についての考察──

空間において窓の果たすモノとしての機能を考えると、それは「光の入り口」ということがおおいにある。それは時に強い光であったり、穏やかな光であったり。その光が、空間を彩る重要な要素となる。

窓が外との境界という役割を果たすことで、その向こうの風景もまた窓によってさまざまな見え方をする。少しぼやけたり、色みが変わったり。窓を通すことで、景色が絵画の役割を果たしたりもする。

窓からの光が室内を照らすことで、たとえばガラスは美しく輝く。それは時間とともにゆるやかに表情を変え、空間における重要な有機性のひとつになる。キラキラ、キラキラと。

窓の向こうの木々は季節によって光とともに色を変え、空間にも四季を与える。そのスペースに椅子があるのはある意味必然で、窓際は空間の中の特等席ということになる。

人は、すりガラスであったり、薄い布であったり、境界をつくることで窓から光だけが入ってくるように工夫もする。降り注ぐ光は電球のそれとは違って、空間をやさしく照らしだす。

布を通した外からの光に照らされた空間は、そのテキスチャーやパターンを控えめに見せてくれる。そっと浮かび上がるように。大理石のひんやり感や木の暖かさが伝わってくる。

美しい床材も、カーテンを通した光に照らされるとじんわりと浮き上がってくる。自然の素材は、自然の光に照らされるのが一番美しいのかもしれない。

窓は、美しいシャンデリアにだって決して負けることはない。それぞれに役割はあるけれど、外からの光はやわらくて、やさしいものなのだ。

窓はときには外への出口にもなる。ただ、窓は扉とちがって内なる外としかつながっていない。庭であったり、ベランダであったり。出入口ではなく、あくまで境界の一種なのだ。

空が見える窓はそれだけで美しい。階段を青空へ向かって登っていったところで、決して天国にいけるわけではない。でも少しくらいいやなことがあったってうきうきさせてくれる。ジェームス・タレルもきっとそう思ったのだろう。

 

 

山本憲資/Kensuke Yamamoto
株式会社Sumally Founder & CEO。一橋大学商学部を卒業後、電通に入社。その後、コンデナスト・ジャパンに入社し、雑誌『GQ JAPAN』にて編集者として活躍。コンデナスト・ジャパンを退社後、2010年4月『Sumally』を設立 http://sumally.com/

 

取材協力/公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館
http://www.teien-art-museum.ne.jp
※特別な期間を除き、美術館内での撮影はできません。

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