窓の彩りを考える
18 Mar 2015
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テキスタイルコーディネーター/デザイナーの安東陽子さんは、ベテランから若手まで多くの建築家が手がけた作品において、窓まわりのテキスタイル演出を担当。窓に彩りを加えると、空間がより表情豊かになります。安東さんのこれまでの作品の一部を振り返り、窓の彩りについて考えてみましょう──
ゆるやかにうねるアルミ曲面で構成される建物の外壁は、その日の天気や時刻によって緩やかに色をかえていく。部屋のカーテンのストライプは、そんな光の様子を表現しています。刻々と変化するテクスチャーは、窓のガラス面とクローゼットを滑らかに繋ぎます。
日射のなか図書館の窓際で本を読んでいると、カーテンのうろこ模様の輪郭から光が漏れてきてテーブルにアーチ型の影をおとします。建物のコンクリート製のアーチが、窓を通して感じられる時間を演出します。
結婚式場のガラス窓には、当間高原のアイリス祭りにちなんだアイリスの折り型のパターンと雪国を象徴する雪のモチーフをあわせたパターンをつくりました。結婚したカップルに降り注ぐライスシャワーのように、窓からの光は雪と花を届けます。
藤原徹平さんの設計した個人邸の寝室の窓に、斜めの壁からざーっと落ちる重量感感のあるカーテンを作りました。使わないときには窓際の床にモコモコと気持ち良さそうに休む動物のような表情を連想させます。
レールのいらないカーテンをつくりました。マイクロ吸盤の特殊加工の生地を、雪の結晶のカタチにレーザーで切り抜いて、窓ガラスに直接ペタペタと貼付けました。生地がはりつくと、固い窓ガラスは少し柔らかな表情にかわります。
広いシェアオフィスをしきる建具のようなカーテンです。水色の生地と白の生地を重ねた透明感のあるものに仕上げ、部屋の中に開いた窓のようにしつらえました。
子供部屋のカーテン。柔らかい色の組み合わせ、抽象的な絵画のようなカーテンを小さな窓に重ねました。ここで過ごす子供達が、「曇りの日もふわふわの雲を想像してくれたらいいな」と思ってつくりました。
友人の設計者の自邸のカーテン。色々な厚みのシンプルな生地を繋ぎ合わせて、ざっくりとした素材を生かした空間のパッチワークをつくりました。この生地には、プライバシーを守りながらも、外の景色をやわらかく取り入れることができます。
那須の自然の中に映える美しい三角屋根の住宅の窓には、柔らかくプリーツをかけて窓の景色をひきたてようと考えました。ナチュラルな自然感を室内に取り入れるために、麻などの天然素材を使っています。
ベケットによる「ねえジョウ」に基づいた前衛的な演劇の舞台におかれた窓には、主人公の男と亡霊となった女を繋ぐ役割が与えられています。男にとって、窓は、他者の存在そのものです。カーテンを開けたり閉めたりしてその存在を確かめているうちに自分の心もカーテンと共に段々ボロボロになっていくような、追いつめられて行く過程を窓が見守ります。
安東陽子/Yoko Ando
テキスタイルコーディネーター/デザイナー。1968年東京生まれ、武蔵野美術大学短期大学部グラフィックデザイン科卒業後、株式会社布 (NUNO) に入社、クリエイティブスタッフとして勤務。2011年に独立し、安東陽子デザインを設立。テキスタイルコーディネーター・デザイナーとして、伊東豊雄、山本理顕、青木淳、シーラカンスアンドアソシエイツ、平田晃久など、多くの著名建築家の作品で窓まわりのテキスタイルを手がける www.yokoandodesign.com