CULTURE

建築、写真、アートなど、"窓"をめぐるコラムやレポート

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December 7, 2017

第15回 東チベット・色達 「赤いスリバチ」(後編)

ラルン・ガル・ゴンパの中心に降りてみると、ちょうど講義や集会の終わった時間なのか、僧侶たちが次々と僧院に出入りしているところだった。同じ色の袈裟を着た人々が中心に吸い込まれ、そして散っていく姿が、スリバチ地形と呼応した生活リズムとなっているようで興味深い。

  • 町の中心の僧院に集まる僧侶たち。建物も服も同じ色
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September 6, 2016

第一回 トーベ・ヤンソンの窓

写真家ホンマタカシが自身の写真とテキストで切り取る、気になる窓。連載第一回目は、作家・トーベ・ヤンソンへのオマージュとしてささげられた最新の写真集 『A song for windows』から、写真集未収録作品を含む5枚の写真とスケッチをお届けします。

舞台の小屋は、ムーミンで有名なトーベ・ヤンソンが、毎夏20年以上を過ごした、フィンランドの群島にある小さな島にあります。島は、グルリと周囲を歩いて7分くらいの無人島で、小屋のサイズは幅4メートル×奥行き5.45メートル、高さ2.2メートル。

December 17, 2014

第1回 窓の本棚

建築家の大西麻貴さん、百田有希さん夫婦の若き建築事務所o+hに、「本棚」の制作を依頼。そこからスタートしたプロジェクト。作品完成までを追う、連載コンテンツの第1回目です。

 

“小さな建築のような本棚”をつくってください…!

私たち窓研究所は、「窓は文明であり、文化である。」の思想のもと、窓に特化した研究活動“窓学”を2007年より開始。その研究成果として、これまでに国内で5冊、海外で3冊の書籍を出版いたしました。

しかし、これらの書籍が書店で並ぶ「建築」コーナーは、一般的には“理系の専門書籍が並ぶエリア”。アカデミックな印象が強いため、多くの人に手にとってもらいたいと願う私たちにとって、そのハードルはひとつの課題でした。

こどもから大人までが手に取りたくなる、きっかけづくりが必要。その、プロジェクトをカタチにするパートナーとして、最も適した人は誰なのか。私たちが考え制作を依頼したのが、大西麻貴さん、百田有希さんの建築事務所、o+hでした。

  • 二重螺旋の家(2011)
September 20, 2017

第1回 光のための開口部

儚く、か弱いけれど、北欧の光には不思議な魅力がある。おそらく、移ろいやすいものだからこそ、北欧の人は太陽の光を特別なものとして、崇めているのではないだろうか。

筆者が北欧デンマークで暮らしたのは2006年から2008年の2年間。住んでみて、北欧のほとんどの家では窓にカーテンをつけないことに気づき、驚いた。家の中が外から丸見えでもお構いなし。むしろ窓辺に花を活けたり、置物を飾ったりして、室内インテリアを自慢気に見せているのである。しかし一番の目的は、太陽の光をなるべく多く室内に取り込むことにある。

June 28, 2016

第3回 アラブ世界研究所

ひとりの建築家が彗星のごとくこの世に現れ、人々を驚かせることがある。今回取りあげる建築、「アラブ世界研究所」もまた、フランス人建築家、ジャン・ヌーヴェルの存在を世界に知らしめた、初期の代表作である。国際コンペを勝ち抜いたヌーヴェルの提案は、あらゆる人々の度肝を抜かせたことだろう。前回取りあげたル・コルビュジエが窓を横長にぶち抜いてみせたのに対して、ヌーヴェルは建物の正面全身に、不思議な採光窓を纏わせた。意味と敬意と、美しさをもって。

  • photo: James Mitchell
April 1, 2015

第2回 窓の本棚

「窓の本棚」プロジェクト第2回。私たち窓研究所は建築事務所o+hに、小さな書店やギャラリーなどで、本の全国巡回展を開催するための什器の制作をお願いしました。作品のコンセプトは、“小さな建築のような本棚”です。今回は、大西麻貴さん、百田有希さんからの提案内容を、ご紹介したいと思います。

大西:今日は模型でお見せします。まだ途中ではあるのですが、広がっていって空間を作る「屏風 (びょうぶ) 案」と、「建物案」の2つをデザインしています。

October 18, 2017

第2回 風景のための開口部

採光、通風、人の通行・・・。開口部には色々な用途がある。いずれも物理的に何かがそこを通過するために開けられたものである。しかしそれ以外の開口部も存在する。ガラスという素材がもつ透過性によって、内部から外部へと向かう視線のために作られた窓、つまりそこにある風景を享受するために設けられた開口部である。物理的な開閉は目的でないため、「羽目殺し」と呼ばれる固定窓になることが多い。

1.「切り取られた風景」──フレーミングされた窓

1-1.美術館

「世界で一番好きな美術館は?」と聞かれたら、迷わず「ルイジアナ現代美術館」と答えるだろう。そして一番のお気に入りがこの展示室である。ジャコメッティの彫刻はいつも同じ位置にあり、変わるのは壁に掛けられた絵画と、窓の向こう側の景色である。フレーミングされた景色はまるで一枚の巨大絵画のようである。季節によって、時間帯によって、天候によって、景色は変わり、いつ行っても歓びと感動を与えてくれる。大きく一歩踏み出した人(ジャコメッティの作品)は永遠に時が止まっているが、その背景にある風景は絶え間なく変化し続けている。

November 15, 2017

第3回 往来のための開口部

開口部の用途のひとつに、物質的なモノの行き来がある。基本的に内部空間と外部空間との境界面に開口部は設けられるものである。そこを通じて人やモノの往来が可能となる。遮断されていた空間が開け放たれ、内部と外部が連続すると、様々な変化が生じる。例えば外部からの刺激として、新鮮な空気が流れ込んだり、鳥のさえずりや波の音など外界の音が耳に入ってきたり、花の芳しい香りがしたり、様々な刺激が加わるであろう。その逆に、内部のアクティビティを外に持ち出し、その境界をなくすこともある。例えば、屋外で食事をしたり、読書したり、音を奏でたり、などの行為が外部と連続するケースである。

今回紹介する開口部は、人の往来を目的に設けられたもので、開放することで内部と外部がシームレスに連続するものを取りあげる。ガラスという透過性のある素材が果たす役割が大きく、視覚的には境界をなくし、外部と連続させている。

1.住宅

庭に面して、ガラスの大きな掃き出し窓が連なっているのが特徴のこの住宅は、デンマークの建築家アルネ・ヤコブセンが設計した《コックフェルトの別荘》(1957年)である。引戸式もしくは蝶番式のガラス窓の開閉によって、内部と外部を行き来できる。居室は一段高いところに設けられ、外部のウッドデッキ(縁側)に出て遠くを見やると、海を望むことができる。ウッドデッキへは各居室から行き来でき、そこから階段を使って庭に下りることができる。芝生が敷き詰められた緑の庭では、ガーデニングパーティやバーベキューが行われたのではないだろうか。

デンマークでは1950年代後半にこれと類似の住宅が多く設計されている。《ハルドー・グンログソン自邸》(1958年)、《ポール・ケアホルム自邸》(1963年)などが知られているが、日本の伝統建築を参照したと言われている。常に時代を先取りするヤコブセンは、それよりも早く「引戸」や「縁側」の仕組みを住宅に取り入れ実現させている。

デンマークに限らずヨーロッパでは「引戸」という概念はなかった。襖で空間をフレキシブルに開閉する日本の住居が彼らにとっては新鮮で、画期的かつ機能的とみなされ、戦後のモダンハウスの潮流となった。日本の雑誌『The Japan Architect』が1956年6月に海外向けに英語で発売されたのをきっかけに、写真で目にする機会が増えたことがその背景にある。引戸を開け放つと、庭を鑑賞するための縁側が設けられ、内部と外部をつなぐ緩衝領域、いわば「中間領域」を形成している。

September 21, 2016

第2回 上海・窓から生える鉄の棒 (後編)

見るものが決まると、足取りは一気に軽くなる。鉄の棒を探す旅のはじまりである。といっても、10歩も歩けばすぐに見つかる。さっそく、当然のように無数の鉄の棒が生えている集合住宅を発見した。鉄の棒の下には何台か車が停まっているが、落ちてきたりしないのだろうか、少し不安になる。

  • 無数の鉄の棒の下には、車が停まっていた
April 19, 2017

第10回 トルファン「海より低い砂漠」(後編)

ぶどう干し小屋から教えられたトルファンにおける建築のつくりかたのエッセンスは、レンガとポプラと少しの枝葉で影をつくり、風を通すことだった。

トルファンでは、7軒のウイグル人の家を訪問した。以下がそのうち6軒と、前回のぶどう干し小屋群の位置をプロットした図である。格子状の広い道が広がる中心部には漢民族が多いらしく、その周りの緑が多いところにウイグル集落は位置している。

  • 訪問した家のプロット(Google Earthの航空写真に筆者プロット)
September 17, 2015

第1回 フランス窓 ─パリの呼吸と眼─

私がパリで生活を始めて6年が経った。自身の日々の生活が常に変化する中で、パリの街並みは変わることなくそこにあり続ける。通りやセーヌ川の向こう岸に見える小さな窓が並ぶ壁の風景は、私がここにくるずっと前から変わることなく、また室内から窓越しに見える通りの往来は非日常のような賑わいを感じさせるが、それはパリの営みの中で何度も繰り返されている。

窓はパリという都市の歴史や文化の中で、建物の一要素でありながら決して小さくはない役割を持ち、一つの象徴として存在してきたことに疑いはない。一方でパリの生活の中で窓の周りで起きていることのほとんどは、日常的なことであるかあるいは日常の中のほんの些細な変化にすぎないのも事実である。

パリの窓とは? 今現在その本質を率直に答える準備がない。その答えが本当にあるかもわからない。ひとまず、立ち止まってしまいそうなこの問いを前に進めるべく、様々な「パリの窓」の断面を一つずつ切り開いていこうと思う。パリの窓の浮上を期待し、それへの接近を目指して。

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October 5, 2015

記憶を切り取る象徴 あるいは表象の出入口

エアコンから吐き出される空調の音が大きくなり小さくなり、掛け時計の秒針は大げさに鳴り響くように一秒一秒を真っ当に刻む。窓からは茶色がかった山々の稜線と、出所も知れないどこからか漂う煙突の煙が流れているのが見える。視線を部屋に戻し、もう一度窓の外に目を向けたとき、その煙は跡形もなかった。

彼女は、いつだって唐突だ。ある日突然に彼女のソーシャルメディアから、この世の美しさを正しく凝縮したような景色がポストされる。そして私はまた、彼女が創作の旅に出たことを知る。

“窓”。この旅で写されたそのどれもがペーソスにあふれて見えるのは、冬だったからかもしれないし、風邪をひいていたからかもしれないし、もう私が彼女の側にはいないからかもしれない。

これは、彼女と巡った雪の残る東北での記録であり、その前後を彩った旅先での思い出と、共に過ごした10年と少しの軌跡だ。

March 18, 2015

窓の彩りを考える

テキスタイルコーディネーター/デザイナーの安東陽子さんは、ベテランから若手まで多くの建築家が手がけた作品において、窓まわりのテキスタイル演出を担当。窓に彩りを加えると、空間がより表情豊かになります。安東さんのこれまでの作品の一部を振り返り、窓の彩りについて考えてみましょう──

  • 「SUS福島工場社員寮」2005年 (株式会社布 在職中作品)
    設計:伊東豊雄建築設計事務所、 写真:阿野太一
July 19, 2017

第13回 タシュクルガン「天窓の記憶」(後編)

翌朝、予定通りダンディの家に行くと、彼と同い年くらいのもう一人の男が合流した。タバコを一本吸い終え、3人で家を出る。

到着したのはダンディの家と同じような石造りで黄土色の泥を塗った家であった。そこには様々に着飾った老若男女がおり、なにやら祭りでもはじまりそうな雰囲気であった。

  • 右が訪れた家の外観。左はコンクリート造の家だが、色や文様は共通している
March 22, 2017

第9回 トルファン「海より低い砂漠」(中編)

集落の外れの丘に発見したぶどう干し小屋群は、実はトルファンに到着した日の早朝、10時間ほどの電車移動に疲れたままバスで宿の近くに向かう時に見たものだった。朝日に照らされた丘の上に、同じ方向を向いて立つ穴ぼこだらけの建物群は、寝ぼけまなこの僕を引きつけた。

ウイグル集落を抜けて、小屋群の待つはげた丘に向かう。斜面の上に整然と並ぶそれらの多くが、日干しレンガでできている。足元に広がる丘と同じ色だ。水と太陽によって、丘が小屋に変形したのである。一部、焼成レンガを使うものもあり、基礎だけを残している跡も見つかった。

  • ぶどう干し小屋群。水と太陽による、丘の変形
June 28, 2017

第12回 タシュクルガン「天窓の記憶」(中編)

フロントガラスにひびのあるダンディの車に7分ほど乗って着いたのは、先ほどまでの菜の花畑の広がる集落とは全くちがう湿地帯であった。なめらかでモコモコとした草原のなかを川が流れている。

一部は景勝地として観光客に開かれているようで、その日は観光客らしい人影を見なかったが、さながら日本の「尾瀬ハイキングコース」で見かけるような通路や休憩スペースなどがつくられていた。ダンディの背中について、湿地帯の奥の方へ歩いてゆく。

  • モコモコとした湿地帯をゆく
March 23, 2015

第2回 バルパライソ ─瞳の奥の楽園─

2回目の今回は、チリ第2の都市バルパライソにおける開口部のあり方について考察してみようと思う。まずはこのバルパライソという街について簡単に説明する必要がある。"Valparaís=バルパライソ" はスペイン語の "valle=谷" と "paraiso=天国" が合体した言葉で、つまり直訳すると「天国の谷」という事になる。

チリの細長い国土の沿岸中央付近に位置し、内陸の首都サンチアゴから車で2時間弱。約200年前からゴールドラッシュに沸くアメリカ西部とヨーロッパをつなぐ寄港地として重要な位置を占め、街は大いに繁栄した。しかし1914年のパナマ運河開通と共に港としての権威は徐々に失墜し、今ではかつての栄華も100年にわたる太平洋の潮風によって色褪せてしまった。

September 17, 2015

第1回 煉瓦色のシークエンスを辿って

意外に感じるかもしれないが、ロンドンという都市の良いところは“乱雑”さにあると思う。実はロンドンでは、街のいたるところで異なる時代背景をもつ要素が、互いの領域をオーバーラップさせながら共存している。例えば、個々の建物のスケールで見てみれば、その多くが度重なる改築や増築によって更新されていて、新旧の境界を見極めるのは難しいことがわかる。また、街区の構成を取ってみても、歴史的に都市全体のプランニングが実施されることがなかったこの街には、グリッドや幾何学的な軸といった基本的ロジックは存在せず、それぞれの場所をつなぎ合わせるように有機的な街路のネットワークが広がっている。

人間のスケールを超えた高層ビルが建つシティ・オブ・ロンドンの金融街を歩いていても、街路自体は18世紀ジョージアン時代の曲がりくねった構成のままで、不思議なミスマッチ感を覚える。この街のイメージは、曖昧な境界を持つ個々の要素の無造作な連続体、つまりシークエンスとして形成されているように感じる。ロンドンが「村の集合体」としばしば言われるのにも納得がいく。

  • 新旧が共存するロンドンの街並み
July 8, 2013

中野正貴『東京窓景 TOKYO WINDOWS』

東京の風景を“窓”越しに捉えたこの写真集は、さまざまな東京の“窓辺”へと私たちを誘い、その部屋の住人だけが目にしている東京の日常風景を見せてくれます。いわば、住人それぞれが持っている「個人的な東京」を“窓辺”ごと、切り取って集めた1冊です。

“窓”の向こうにあるのは、私たちがパソコンやTV画面を通して何度となく目にしている、あるいは通行人として実際に紛れたことのある、よく見慣れた東京の姿です。しかし、“窓”の内外を合わせて目にする東京の姿には多くの発見があり、とても新鮮に映ります。例えば、私たちが意識している風景と、見えていても見過ごしている風景との対比。目まぐるしく変化し続ける都市の時間軸と、そこに暮らす個人の時間軸との対比。“窓辺”にあふれる住人それぞれの個性の対比もあります。

ところで、この写真集に収められた東京の風景が、どこかよそよそしく、私たちに不安な感情をも呼び起こすのはなぜでしょう。とある部屋の住人になり代わって“窓”を眺める私たちの目には、東京に暮らす無数の人々の存在が、都市のエネルギーとなって感じられます。その存在は、まぎれもなく私たちの生活の一部となっているのですが、“窓”を隔てた別世界の住人模様として眺めることも可能なので、フィクションのように感じます。実際に私たちは、“窓”の内外を行き来しながら、確かな自分とおぼろげな自分とを演じ分けているのかもしれません。

作者は巻末でこう述べています。「人々はパソコンや携帯電話の画面の中の仮想現実の風景に、より親近感を覚え始めた。内側へ内側へと侵食する腐食物は、人々の現実味を鈍麻させる。虚構から虚構を創り出すその根拠のない連鎖反応は、人々をニヒリズムへと導く。いつの頃からか我々東京人は、混沌とした都市全体を正視することを拒否した。」

“窓”は本来、私たちと現実の都市とをつなぐものでもあります。しかし、この写真集には“窓”に隔てられた「2つの東京」の姿があります。現実味ある内側の東京と、仮想現実化して見えだした外側の東京。“窓”越しに2つを重ね合わせ、「1つになった東京」の姿を想像することが、都市に生きる私たちにとって必要なのでしょう。さあ、あなたの住む“窓辺”は、あなたの街とどのようにつながって見えますか?

 

『東京窓景 TOKYO WINDOWS』
著者|中野正貴
出版|河出書房新社
出版年|2004年
定価|2,900円+税

March 8, 2016

第2回 奥行きがもたらす生活の深み

朝の空気が冷たくパリッとするようになり、サマータイムの終了がいよいよ秋の終わりを告げ、長い冬の訪れを知らせてくれた。ヨーロッパ各国で実施されているこのサマータイムという制度は、3月末から7ヶ月の間、標準時間を1時間進めるというもので、その起源は20世紀初めの英国人建築業者ウィリアム・ウィレットの提言に遡る。彼はある夏の朝、とっくに太陽が昇っているにもかかわらず、街の人々が家の鎧戸を閉めたまま眠っている状況を見て、せっかくの日光が浪費されているように感じたという。やがてウィレットは“The Waste of Daylight”と題したパンフレットを刊行し、標準時間の調整によって日照時間を有効活用することの意義を説いた。実際に制度として導入されたのはその十数年後の1916年のことであった。
第一次世界大戦が始まると資源の節約が英国政府の切実な関心事となり、石炭の消費量の抑制を目的として日光の活用が採用されたのだ。

  • ハイドパークもすっかり秋模様。夏には日光浴を楽しむ人々で賑わっている。
May 23, 2016

第1回 パンテオン

驚異のドームに、一筋の光 パンテオン(イタリア・ローマ)

建物には、いくつかの穴が開いている。そのうち私たちが日常生活の中で触れている穴が、ふたつある。ひとつは「誰か」が出入りするための穴、出入り口。ひとつは「何か」が出入りするための穴、窓。

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December 11, 2014

衣食住の窓

マガジンハウスのクオリティライフ誌『& Premium』エグゼクティブディレクターで、編集者の柴田隆寛氏。著書『TOOLS』、『リサ・ラーソン作品集』や、ウェブマガジン『LIFECYCLING』『ONE DAY -犬と僕たちの生活』のディレクションなど、これまでに数々のライフスタイルの提案をおこなってきた柴田氏が感じた、「衣食住の窓」とは──

July 15, 2014

堀江敏幸『戸惑う窓』

窓の前に立ったとき、ふと浮かんだ感情から内なる宇宙にとびたつエッセイ集。

筆者は初めの章でこう述べます。『窓とはいったいなんだろうか? (中略) 窓について考えるたびに私は戸惑う。それどころか、とまどう、という音のなかに「まど」の響きを聞いてしまうのだ。』一瞬、こんなにも窓について考えた人がいるのかと驚きますが、窓の前に立ったときに感じる様々な気持ちを振り返れば、私たちも筆者の戸惑いに共感できるのではないでしょうか。

筆者はこの戸惑いに対して、『主導権は窓に渡しておけばいいのである。』と言い、窓を意識した文学作品、絵画、写真、映画、詩歌、科学の知識まで、次々と思い浮かべながら、宇宙空間とも言える無限の思考をただよっていきます。万葉集、サン=テグジュペリとレオン・ウォルト、ヒッチコックの映画「裏窓」、マチスの絵画、リルケの詩、毛細血管の「有窓性」・・・筆者の幅広い知識を愉しみながら、読者は窓とそこに生じる「何か」を追って行くことができます。

窓とはどんな存在なのか、窓から与えられる不安、期待、さまざまな感情・・・。著者の文章・思考をたどって行くうちに、窓が明るく、みずみずしく見えたり、不気味に見えたり、まるで白昼夢を見ているような気持ちになります。

装丁家・間村俊一による美しい装丁、読む者を夢想へいざなうページの余白も素晴らしく、何度も窓の前に立ちながら、ゆっくりと読みたい一冊です。

 

『戸惑う窓』
著者|堀江敏幸
出版|中央公論新社
出版年|2014年
定価|2,200円+税