May 24, 2013

浜本隆志『「窓」の思想史 日本とヨーロッパの建築表象論』

“窓”を切り口に建築から風景・風俗・政治支配にまで及ぶ思想史を探求する一冊。産業史、技術史の具体的な内容をふんだんに盛り込みながら、その根底にある思想をわかりやすく解説してくれます。

主題は日本とヨーロッパの思想の根底にある水平志向と垂直志向。近代建築の高層化、“窓の増殖”化は、かの有名な『バベルの塔』と同じ垂直志向ではないか―というスタートから、“窓”の思想史の旅に惹きこまれます。その相対する志向は、窓の形状、開閉、操作部品、さらにはノコギリや、お寺や教会の鐘まで脈々と流れているのです。読み進めれば、きっと自分のバックグラウンドの水平または垂直志向に思い当たることでしょう。 後半では、多文化が混在する現代で、文化の共生への水平志向の可能性が示されます。進歩主義により“垂直”に“積み上げて”きた文明が果たして“未開の生活”より優れているのか。ここで紹介される文化人類学者レヴィ=ストロースの言葉「文化そのものには優劣はない」 (なんとも刺激的なおことば!) 。垂直志向から水平志向へ―という提言には、希望があふれています。

読み終わった後には、私たちのそばには確かに“窓”があり、なにか大切な思想を表しているのではないかと思い至らせてくれる一冊です。これを読めば、何気なくみた“窓”からいつでも壮大な思想へのトリップが楽しめるようになるでしょう。

 

『「窓」の思想史 日本とヨーロッパの建築表象論』
著者|浜本隆志
出版|筑摩書房
出版年|2011年
定価|1,600円+税