窓からのぞく現代台湾

Contemporary Taiwan through a Window
January 12, 2022

第3回 涼亭の行方 蘭嶼・後編

前編より)

野銀集落をあとにして、島を一周してみる。
道中では岩山の上から人間を見下ろすヤギの群れに出くわしたり、岩場の窪みにあるタオ族の聖地のような場所を見つけたり、台湾本島とも違った異国感がある。聖地の岩にペンキで描かれた十字架から、台湾原住民にはキリスト教徒が多いことを思い出す。17世紀よりスペインやオランダの伝道師が台湾にキリスト教を広めていったことは事実として知っていたが、太平洋に浮かぶ熱帯の島の、このゴツゴツとした岩の窪みにまで辿り着いた彼らの思想を目にすると、気が遠くなる思いがする。

山上にある気象台から島全体を見てみようと、坂道をのぼる。途中、さっきまで見学していた野銀集落を見下ろして、おどろいた。「地下屋」からなる黒い集落の隣には、それと同じような規模で、コンクリートでできた集落が並んでいたのである。案内をしてくれたタオ族の女性をはじめ、蘭嶼の若い世代が普段暮らしている「水泥屋」(コンクリート住宅)である。あの暗い地下屋から脱出した若い世代が、旧集落とはしっかり線引きをして、その隣にパステルカラーの家をポンポンと建てていた。

  • 旧集落と新集落が並ぶ様子
November 11, 2021

第2回 埋もれる黒屋根 蘭嶼・前編

「台湾人」と一口にいっても、台湾には民族も宗教もバラバラな、色々な人が暮らしている。今回は台湾本島を飛び出し、離島について書いてみたい。
台湾東部の台東から90kmほど南東に、太平洋に浮かぶ小さな火山島がある。蘭嶼(ランユー)というその島には、古くから原住民のタオ族(ヤミ族とも)がトビウオを追いながら暮らしており、現在はダイビングスポットとして観光客で賑わう場所にもなっている。なお台湾原住民とは、中国大陸から多くの移民が台湾に渡って来た17世紀よりも以前から存在していたいくつかの民族を指すが、タオ族はその中で唯一離島に住む民族である。

島に行くには少し苦労する。黒潮を越える、台東から2時間ほどの船旅である。
港から乗り込む朝一の船内は、異常に冷房が効いていた。座席に用意されたビニール袋、通路にいくつも置かれた巨大なバケツが、旅の過酷さを予感させる。「強力な酔い止めを」と薬局で求めた薬を祈るようにして飲み、席に着くなり目を閉じた。
船が本格的に揺れ始めると、被害者たちの声が聞こえてくる。ビニール袋を補充する船員が慌ただしく通路を駆ける。覚悟はしていたがおそろしい世界である。途中、隣の席のタオ族の少年が肩にもたれかかってきたときは最悪の事態を覚悟したが、幸いにも横でスヤスヤ眠る少年と共に何事もなく島に上陸することができた。

  • 蘭嶼の海