September 2, 2020

カーテンウォールのなかの自然

木や土が生み出す、澄み切った空気。台所からホクホクと流れ出す、白いろの蒸気。大地に芽吹く草木と、花瓶に浮く切り花の束。夕焼けに染まる空と、液晶テレビの三原色。
人々の暮らしと自然をつなぐ窓辺には、たくさんのいろが混ざり合う。韓国、日本、インド、タイ、そしてもうひとつは想像の場所から───水彩画家のビョン・ヨングンさんが描く、いろとりどりの窓のはなし。

東京の街を歩いていたときのこと。最近建てられたばかりのビルの前を通り過ぎた。ビルの一階には、大きな滝のようなアート作品が設置されていた。滝の周りには10メートルほどの植木が並び、都会に突如現れたオアシスのような景観を造り出している。僕はビルの外壁に近寄り、ビルの中の様子をカーテンウォール越しに覗いてみた。ガラス面には“東京の自然”が映り込んでいた。そしてその奥に、“ビルのなかの自然”が垣間見える。なんとも奇妙な光景に胸がざわついた。これからは、ビルの中に何でも入れられる時代になるのだろうか。

 

ビョン・ヨングン/Byun Young Geun
韓国出身の水彩画家、イラストレーター、グラフィックノベル作家。現在は東京を拠点とし、書籍やCDジャケットのアートワークを手掛けるなど、幅広く活動。2013年から毎年発表している作品集では、一切の文字を用いずにイラストのみで物語を展開させるグラフィック・ノベルの手法を一貫して取り入れ、日常を取り巻く都市や自然のありかたを独自の視点で描き続けている。