第2回 トレンティーノの貴腐ワイン
ミラノから東に車を走らせ、ヴェローナを北に抜けると、イタリアで一番大きな湖であるガルダ湖が見えてくる。さらに湖沿いを北へ走り続けるとトレンティーノに到着する。ここはトレンティーノ=アルト・アディジェ州に属する県で、オーストリア、スイスとの国境に位置するため、イタリア語とドイツ語が公用語として認められている。小高い山脈に挟まれた谷地のため、夏でも涼しい日が続く。イタリア人だけでなく隣国からも避暑地として利用され、ツーリングやサイクリングなどを楽しむ人々の姿が見られる。
第2回目は、ここトレンティーノの貴腐ワインと自然を活用する窓についてご紹介したい。
貴腐ワインとは、貴腐菌(ボトリティス・シネレア)と呼ばれる、発酵のための菌をぶどうに付着させてつくられる、甘口のデザートワインの一種である。菌はぶどうの表面を保護しているワックスの層を溶かし、果実の水分の蒸発を促す。そうすることで、糖分が凝縮され独特の味わいが生まれるのだ。貴腐ワインはその希少性ゆえに高級なワインとして知られている。
一般的な貴腐ワインがぶどうの栽培中に貴腐菌を繁殖させる一方、トレンティーノでは収穫後に屋根裏部屋で貴腐菌を繁殖させる。その特殊な製法から芳醇な味わいをもつと言われている。
小高い山脈に挟まれた谷地にあるトレンティーノ