March 16, 2017

アメリカ編 (下)

八木幸二 (建築家)

さまざまな様式の展開
アメリカ各地で、豊かになって来た人たちが、ジョージアン、フェデラル、グリーク・リバイバル、ゴシック・リバイバル、ヴィクトリアンなどさまざまな様式の住宅を展開し、やがて19世紀末には、次の時代の幕開けとなるスティックスタイルやシングルスタイルが登場した。

玄関キャノピーと窓
入植してから時が経ち、建築様式を意識した住宅が増え、玄関前のキャノピーと窓まわりは様式の表現手段となっていった。

  • ボヴォールトアーチ状の玄関キャノピーには築年の1788が入っている
  • キャノピーは半円形に出ていて、2階の窓にはパラディアンスタイルを採用している
  • キャノピーは単純な三角ペディメントであるが、2階の窓ではより凝ったスタイルとなっている
  • 1、2、3階と階段室になっている玄関では、1階の扉と2、3階の窓を一体的にデザインしている

階段・列柱廊から玄関へのドラマ
移民してきて2代目、3代目の成功した人たちは、より壮麗な家を建てるようになり、ヨーロッパ的様式建築の住宅版がドリームの証となった。馬車で到着し、階段を上がり、列柱に迎えられ、玄関に至るドラマは、映画『風と共に去りぬ』さながらであった。

  • ウイングが左右に出ているパラディアン住宅の中央棟正面入口
  • 階段の上に2層の列柱があり、その上の大きなペディメントで豪壮さを強調している
  • グリークリバイバル様式はギリシャ神殿を範としているが、屋根裏部屋の窓はパラディアン様式が変形したもの

展望デッキ
家の上部から周囲を展望するため、上階にベランダを設けたり、屋根の上に登れるようにすることが多い。電話や無線のなかった時代、入港する船や幌馬車の土煙を早く見つけることは大切であった。その名残が、住宅に残っているともいえよう。

  • 船乗りの妻が遥か港を望む屋根上展望デッキ、ウイドーズウォーク
  • 『ハックルベリー・フィンの冒険』などの著者として知られるマーク・トゥエインが住んでいた家の3階展望室
  • ヴィクトリアンハウスの展望ベランダ

塔の窓からの眺め
自分の農場を塔の上から眺めて管理するという用途もあったが、来客を塔の上に導いて自慢の農場を見せるという場でもあった。

  • ジョージ・ワシントンが住んでいた家で、広大な農地に囲まれていた
  • 大邸宅のシンボル的存在の塔で、周囲の大樹より頭を出している
  • 多彩な形と窓のある2階建て住宅の上に、展望用の塔が突き出ている

八角形の美
19世紀後半、八角形プランは採光に適しているということで健康住宅として流行した。ロマンティックリバイバルの華やかな装飾とともに、アメリカンドリームの象徴でもあったが、短期間の流行で終わった。

  • 教会や議事堂のドームを芝生の上に降ろし、外周に列柱とベランダを配した姿は、小高い丘の上のランドマーク的存在となっている
  • アメリカの住宅地は一般的に塀やフェンスをめぐらさないので、突然八角形が現れ、19世紀の名残を感じさせてくれる

イタリアネートスタイルのベランダ

  • 19世紀後半に流行したベランダ型住宅の1、2階ポーチで、柱間ブラケットを細かく装飾している
  • 装飾されたポーチとともに、キューポラと呼ばれる展望塔が屋根の上に出ている

スティックスタイル、シングルスタイルの窓
19世紀末にかけて、木造の表現がいくつか現れた。スティックスタイルは構造部材とは別に骨組みを表現するタイプで、シングルスタイルは骨組みをシングル (割板) で覆ってしまう表現であった。

  • スティックスタイルでは骨組みを表現するので、窓は、柱梁との関係で決まっているように見える
  • シングルスタイルでは、屋根も壁も表面をすべてシングルで覆うので面と窓の構成となる

バードハウスの窓
家の形をしたバードハウスがあり、ほとんどその家の模型といえるようなのもある。小鳥の出入りには小さな穴がちょうど適しているので、家の窓が出入り口となっている。

  • 邸宅とほぼ同じ形をしたバードハウス
  • 単純化した家の形のバードハウス
  • 屋根の上に塔状に突き出たバードハウス

 

 

八木幸二/ Koji Yagi 建築家。1944年愛知県一宮市生まれ。1969年東京工業大学建築学科卒業、同大助手。OTCA専門家派遣 (シリア田園都市省) 、クインズランド大学研究員、オクラホマ大学客員助教授、MIT 客員研究員、東京工業大学教授を経て、現在京都女子大学教授。