May 27, 2015

第6章 サッシの断熱性及び気密性の向上

真鍋恒博

窓のディテールを読み解く

初期の住宅用断熱サッシ
〈二重窓用外付けサッシ〉
既に述べたとおり、ビル用の断熱サッシは1962年に発売されているが、住宅用としては、既存の木製建具の存在を前提として、それと組み合わせて二重窓とする製品が登場する。1969年に三協アルミニウム工業から、柱の外側への取付けが可能な外付けサッシ「3K-E・外窓」が発売された。この製品は既存の木製枠に取り付けて二重窓にする、寒冷地向けの製品であった (図版20) 。

1970年には、不二サッシから外付けサッシが発売された。この製品も北海道での断熱窓への使用を前提として、室内側にもうー組のサッシまたは障子を設ける事を考慮した製品である。なお外付けサッシは、片持ち構造で外に張り出すため枠の強度を高める必要があるなど、内付けサッシよりも値段が高かった。

  • 図版20 柱の外に取付けて二重窓に改造できるサッシ
    三協アルミの住宅用サッシ「3K-E『外窓』」は、既存の木製枠の外側に引掛けるように被せることにより、容易に二重窓に改造が可能。同社資料「住宅建材の歴史」より作画。

〈半外付け・内付けサッシ、防音サッシ〉
このように在来構法の窓と組み合わせて二重窓にするための製品が先行したが、水切りが不要な「半外付けサッシ」や、気密性を考慮した「気密材入りアルミ製内窓」なども発売された。室内側のサッシは当初は木製であったが、その後、主として北海道で樹脂サッシが普及する。また二重サッシには防音の用途もあり、1972年に豊和工業から、我が国で初めての住宅用引違い防音サッシ「HAM-70H」が発売された (ビル用の「HAA-70H」も同時発売) 。この製品は引き寄せ機構を持ち、従来の片引き戸タイプの防音サッシと同等の遮音性能を確保した。

複層ガラス用サッシ
〈複層ガラスの普及〉
1974年には、アルナ工機・旭硝子・新日軽・不二サッシの共同出資で、「日本復層ガラス」が北海道に設立された。これによって複層ガラスが普及し、それを用いたサッシも開発された。最も初期の住宅用の製品例としては、1974年に不二サッシから木造住宅用の複層ガラスサッシが発売されている。複層ガラスの空気層は当初は6㎜であったが、その後12㎜の製品が加わった。なお空気層は厚いほうが断熱性能は向上するが、12㎜以上にしても内部の空気に対流が生ずるため性能は上がらない。

〈複層ガラス用一重サッシ〉
1976年にはドイツの技術を参考にした複層ガラスを使用した塩ビ製サッシ「シャノンウインド」が、サンアロー化学 (現・エクセルシャノン) によって発売された。「寒地住宅建設等促進法」における融資対象は、それまでは窓枠は二重以上が条件であったが、この製品の登場を機に、1978年には一重の樹脂製サッシが追加された。

本格的な二重サッシ
〈一体枠二重サッシ〉
1976年に、トーヨーサッシから木造住宅用一体枠断熱二重サッシ「サンペア」が発売された。これは寒冷地での断熱と都市部での防音を目的とした、全アルミ製サッシである。当時の北海道の断熱窓は木製サッシの外側に外付けサッシを取付けたもので、気密性が不十分 (JIS気密ランクで約30) であったのに対して、この製品は枠を一体化することでJIS気密ランク8を実現した。

〈分離枠二重サッシ〉
アルミサッシの枠部分はヒートブリッジになるため、結露防止のためには室内外の枠を熱的に絶縁する必要がある。1977年には立山アルミから木造住宅用二重サッシが発売されていたが、翌1978年には完全分離枠の二重サッシが発売された (図版21) 。新日軽も同年の発売である。不二サッシからは1979年に木造住宅用分離枠二重アルミサッシ「FK-P」、さらに1983年には木造住宅用分離枠二重サッシ (アルミ外枠+塩ビ内枠) が発売された。1980年にトーヨーサッシから発売された分離枠二重サッシは、複層ガラスにも対応した製品であった。

  • 図版21 内外分離枠二重サッシ
    寒冷地用の分離枠二重サッシの例。図は立山アルミの二重サッシ「ツインサッシA型」。1978年発売のものと同系列の製品。室内側の装飾額縁は発売当初はアルミ製であったが、木製に変わったのは後述の「高級感」への対応か。立山アルミ1978年カタログより作図。

〈寒冷地用サッシと防音サッシ〉
寒冷地用サッシは、こうした内外枠の縁を切ったアルミ製品を経て、その後は樹脂サッシが主流になる。またガラスについては、上記のように絶縁サッシ発売当初から複層ガラス用サッシが発売されるなど、より高性能の製品が普及する。なお、寒冷地では断熱が主目的であるため室内側の樹脂化が進んだが、一般地域では内外枠ともアルミの製品を防音の目的で使うことも多かった。

樹脂 (ブラスチック) 製サッシ
〈樹脂製サッシの登場〉
省エネルギーと居住性向上を目的として、寒冷地用を中心に断熱サッシが普及する。これは、優良断熱建材の認定 (1978年) 、BLの断熱基準の認定 (1981年) 、北海道庁独自の断熱基準、省エネルギー法など、省エネルギーの基準が年々厳しくなったことに対応した動きであり、サッシ枠の材質自体を熱伝導率の小さいものにする工夫が各社で行なわれた。

硬質塩化ビニル樹脂 (PVC、以下「塩ビ」と略記) 製のサッシは、ドイツで1955年に開発され、ヨーロッパ各国で応用開発が進められていた。我が国では1973年に大信プラスチック (現:大信工業) によって開発され、旭硝子から「アサヒプラストウインドウ」として発売された。これはイタリア企業との技術提携で開発されたブラインド内蔵のドレーキップ窓であったが、時期尚早のため需要がなく、1976年には製造中止になった。

一般住宅用のサッシとしては、同社から防火等の規制の少ない用途向けの塩ビ製内窓製品「ダブルサッシ」が1974年に発売された。また1976年には、徳山曹達からも塩ビ製サッシが発売され、その後サッシメーカー各社とも樹脂サッシを扱うようになった。例えばトーヨーサッシからは、1982年に断熱二重サッシ「ウォーミーⅡ」 (アルミ外枠+塩ビ内枠) が発売され、さらに1984年には複層ガラス用の全樹脂製サッシが発売された。こうした樹脂サッシは、当初は北海道で使われていたが、その後、青森・秋田などでも使われるようになった。

より高度な性能の追求
〈オイルショックの影響〉
1979年の第2次オイルショックを機に、省エネルギーへの意識がより高まり、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」 (通称「省エネルギー法」) が制定された。翌年には住宅における省エネルギーについても、同法の規定に基づいた基準が定められた。これによってサッシの高性能化が促進されるが、オイルショックによる建設需要の低迷による工事量の減少や、アルミ地金価格の高騰等で、サッシ業界は「冬の時代」となった。

〈より高性能の製品と規格改正〉
しかしこれは、メーカー各社が高付加価値製品の開発に努めるきっかけにもなった。省エネルギー意識が高まり、さらに騒音公害問題も起こっていたため、建物には断熱及び遮音性能の向上が求められた。住宅用アルミサッシにおいては、1979年に吉田工業 (現・YKK AP) からは雨戸と二重サッシを一体化した「三重サッシHY」 (図版22) が発売され、他社からも引寄せ・引分け機構の二重サッシ等、高性能製品が発売された。またビル用サッシでは、西ドイツからの技術導入によるブリッジ方式のアルミ形材を使用した製品などが開発されている。

JIS A 4706「アルミニウム合金製および鋼製サッシ(引違いおよび片引き)」 (現在の規格名称は単に「サッシ」) は、従来のJIS A 4701(1957年制定)と4703(1960年制定)を統合して1966年に制定されたものだが、このJISに強度・気密性・水密性等の各種性能項目・等級・試験方法が現在と同様の形で規定されたのも、この時代である。

  • 図版22 雨戸一体枠サッシ
    吉田工業の「三重サッシHY」で用いられた外寸200㎜以上の型材の製作は、4000t押出機によって可能になった。しかし二重サッシの需要がある東北地方では雨戸を付けない場合が多いため、後に (1998年) 製造中止となった。吉田工業カタログ (年代不詳) より作画。

〈複合材サッシ〉
この頃から、木や樹脂 (室内側) の断熱性や意匠性と、アルミ (室外側) の強度・耐久性の組合せによる複合材を用いた各種の髙性能製品が登場する。また1980年に共和木工から発売された、枠と戸を一体生産する国産木製サッシ「共和木製サッシ」は、敷居にアルミ材を使用して水密性を確保した製品であった。

アルミ・木複合材を枠・框に使用した製品は、1980年頃にアメリカから (マーヴィンウインドーズ社「マーヴィン」) 、1983年には西ドイツから (シューコー社の「コネックス503」) 輸入発売され、1984年頃には国産品も登場している。アルミ・樹脂複合材を用いたサッシとしては、1981年に立山アルミニウム工業から「アルペンALサッシ」が、また1984年には新日軽から「アルプラ105」が発売された。こうした製品は、寒冷地向けに開発されたもので、全樹脂製サッシにはない斬新さが評価され、断熱サッシの新たな潮流を形作った。なお木製サッシについてはまだ製品化が進んでおらず、1983年に木製サッシ業界に参入していた企業は数社だけであった。

機能性から高級感へ
〈洋風化の傾向〉
1970年代半ばには、性能向上による高付加価値製品が登場する一方で、様々な輸入サッシが発売されるようになった。オイルショックの影響でサッシにも高度の断熱性能が求められるようになり、枠と戸の一体生産による木製サッシが輸入され、別荘や高級住宅等に使われた。また樹脂で被覆した木製サッシ (アメリカ製) なども輸入されている。

同時期に、国産の製品においても洋風化の傾向が見られる。1976年には、トーヨーサッシから洋風の居間等に適した1枚ガラスの大型テラス窓「サンテラス・洋風型」、また1977年には立山アルミニウム工業から「ガラリ付アール窓」(外開ガラリ雨戸付サッシの上に半円形の窓を配したもの)が発売された。他にも2×4用サッシなどが登場しており、またヘーベシーベなどのヨーロッパタイプの複動型サッシも1976年に発売されている (前回<複合動作サッシ>の項参照) 。

〈高級化と多様化〉
1970年代後半以降も住宅の洋風化傾向は続き、住宅用サッシにも洋風イメージへの要求が強まり、機能強化や開閉方式の差別化も行われるようになった。1979年には、トーヨーサッシから、嵌殺し窓と開き窓の連窓・段窓等を、鋳物の装飾や方立等を組み合わせて作ることが可能な「サンロイヤル」が発売された。この製品は47パターンの規格仕様に加えてオーダー仕様の受注システムも採用していた。

また、出窓製品 (後述) も各社から発売されるようになり、建物のコーナー部をガラス面にする「コーナーサッシ」等も登場している。住宅用サッシの開閉方式については、内倒しや辷り出し等が雑誌やカタログに掲載されるようになり、その後もこの傾向は続く。

〈木・樹脂との組合せ〉
1984年頃、新日軽からアルミと樹脂を同時に押出す製法のサッシ「APサッシ・アル暖」が発売された。この技術は新日軽独自のものであり、開発の開始は1973年に遡る。また1983~84年頃、新日軽はアルミの室内側に木を貼り付けた木造住宅用出窓サッシ「木彫出窓」を発売したが、断熱性よりも高級感を重視した製品と言って良いであろう。また同社は1986年に、アルミの室内側に樹脂を貼ったサッシ「サンバレーアルプラ」も発売している。

新日軽の「木彫出窓」の他にも、昭和60年頃にトーヨーサッシの複層ガラス入り・アルミ+木の一般サッシ「リッチモンド」 (図版23) 、1985年に不二サッシの複層ガラス入りアルミ+木製サッシ「アルホル」、1988年には、不二サッシのビル用の木+アルミサッシなど、室内側を木にした高級感のあるサッシが、世相を反映して相次いで発売されている。

  • 図版23 高級感のある木・アルミ合成サッシ
    トーヨーサッシ「リッチモンド」は、室内側を木、室外側をアルミとしたもので、その名のとおり木調のリッチなインテリアに合わせた製品であり、防露効果も期待できる。図は「リッチモンド・パティオ」 (片引きテラス戸、2×4納まり) 。同社1989年のカタログより。

その他の動向
〈スチールサッシの更新需要〉
1980年頃は、アルミサッシの普及前に建てられたRC造建物でスチールサッシの取替え需要が増加した。取替え方法には既存枠を除去する「はつり工法」と既存枠を残す「かぶせ工法」があるが、「かぶせ工法」が改修工事全体の80%以上を占めていたと言われている。因みに、筆者が奉職していた東京理科大学神楽坂校舎 (7号舘、1963年竣工) のサッシは1992年にアルミサッシに交換されたが、やはり「かぶせ工法」であった。

〈内嵌め式サッシ〉
内嵌め (内はずし) 式サッシについては前回に述べたとおりだが、最初の製品は1981年に立山アルミニウム工業から発売された「スーパーサッシ」である。従来のサッシは外嵌め式であったが、面格子等を付けた開口部では戸の取外しが不便なため、内嵌め式の製品が開発された。内嵌め式ではレールの立ち上がり寸法に制約があるため水密・気密性能の確保に難点があるが、ビル用サッシで既に開発されていた等圧機構を下枠に適用することで、性能が確保された。他社でも1988年ごろまでには内嵌め式の製品が出揃った。

 

真鍋恒博/Tsunehiro Manabe 1945年生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、1973年東京理科大学工学部建築学科専任講師、1975年同助教授、1993年同教授、2013年同名誉教授。工学博士。2000年日本建築学会賞 (論文)受賞。専門分野:建築構法計画、建築部品・構法の変遷史。主要著書:「図説 近代から現代の金属製建築部品の変遷 第1巻 開口部関連部品」 (1996年、建築技術) 、「建築ディテール 基本のき」 (2012年、彰国社) 、「図解建築構法計画講義」 (1999年、彰国社) 、「住宅部品を上手に使う」 (1992年、彰国社) 。