原田雄次 (Smiljan Radic)

Yuji Harada

建築家。1986年神戸市生まれ。2008年横浜国立大学工学部卒業、2011年横浜国立大学大学院工学府卒業。2012年- Smiljan Radic (チリ、サンチアゴ) に師事

June 30, 2015

第3回 チロエ島 カモメが舞う場所

今回はチリ本土とは異なる文化を有するチロエ島 (Isla de Chiloé) について書こうと思う。チロエ島はサンチアゴから南に1,100kmほど南に位置し、面積8,400k㎡は日本の四国の半分の大きさにあたる。島内の人口は約10万人で、そのうち4万人が島の中心の街カストロに住んでいる。古くから木造文化が発達しており、特に島内の町々に点在する木造教会群は「チロエの教会群」として世界遺産にも登録され、その数は全部で159棟に及ぶ(そのうち世界遺産に登録されているのは16棟)。

March 23, 2015

第2回 バルパライソ ─瞳の奥の楽園─

2回目の今回は、チリ第2の都市バルパライソにおける開口部のあり方について考察してみようと思う。まずはこのバルパライソという街について簡単に説明する必要がある。"Valparaís=バルパライソ" はスペイン語の "valle=谷" と "paraiso=天国" が合体した言葉で、つまり直訳すると「天国の谷」という事になる。

チリの細長い国土の沿岸中央付近に位置し、内陸の首都サンチアゴから車で2時間弱。約200年前からゴールドラッシュに沸くアメリカ西部とヨーロッパをつなぐ寄港地として重要な位置を占め、街は大いに繁栄した。しかし1914年のパナマ運河開通と共に港としての権威は徐々に失墜し、今ではかつての栄華も100年にわたる太平洋の潮風によって色褪せてしまった。

December 5, 2014

第1回 アンデス山脈水平事情

この窓に関するコラムをどう展開していくべきか、少し戸惑っている。というのも柱、床、階段、屋根などなど数ある建築を構成する要素の中で、僕はこれまであまり「窓」というものについて注意を払ってこなかった。なので、ありたいていの手法かもしれないが、まずは言葉の起源から探ってみることにする。

僕が今暮らしているチリは公用語はスペイン語。スペイン語で窓は「Ventana=ヴェンタナ」。これはラテン語の「Ventus(風)」から来ているとされている。それに付随したスペイン語の単語だとViento(風)、Ventilacion(換気)なども挙げられる。なので、やはりスペインでは窓は風や空気にまつわる言葉なのだ。とりわけ、アラビアの影響を強く受けた歴史深いスペイン南西部アンダルシア地方の強烈な日差しと、砂埃の舞う強風が吹く痩せた土地においては。この辺りは、ペドロ・アルモドバルの映画 "Volver" などを見ると、その窓の語源についても、イメージが喚起される。

しかし幾ら語源を探求してみたところで、ラテンアメリカ諸国の多くは既にオリジナルの言語を放棄し、16世紀の大航海時代に押し寄せた外来のスペイン語に上書きされてしまった。ここ500年ほどの文化的歴史を紐解いてみても、あまり深みのある含蓄は得られそうにない。だから、もっと自分がこのチリと言う国で暮らしてみて、旅してみて感じたことからこのコラムを積み立てていこうと思う。つまり、3年弱この国で過ごして窓について感じたこと。それは窓のごく基本的な作用のひとつ、風景を切り取るということへの執念だ。

  • 圓通寺、京都、1678年