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衣食住の窓

柴田隆寛(編集者)

11 Dec 2014

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マガジンハウスのクオリティライフ誌『& Premium』エグゼクティブディレクターで、編集者の柴田隆寛氏。著書『TOOLS』、『リサ・ラーソン作品集』や、ウェブマガジン『LIFECYCLING』『ONE DAY -犬と僕たちの生活』のディレクションなど、これまでに数々のライフスタイルの提案をおこなってきた柴田氏が感じた、「衣食住の窓」とは──

昔から観覧車という不思議な乗り物に憧れている。写真は葛西臨海公園にある日本最大の「ダイヤと花の大観覧車」。高さ117メートル、約17分間の世界旅行。つくづく夢がある乗り物だなって思う。

京都・祇園四条にある、おでんの店「蛸長」。昨年秋、ようやくその暖簾をくぐった。中の様子を伺い知ることができず、扉を開けるのがはばかられる気がしたけど、その分、喜びも大きかった。

オランダ・アムステルダム。運河沿いにある邸宅を改装した「ヴィクター&ロルフ」のアトリエにて。この光を目の当たりにして、フェルメールの絵画がこの国で生まれた理由が、何となくわかった。

今年11月、染色家の柚木沙弥郎先生と、宮沢賢治や民藝に縁の深い盛岡の「光原社」を訪ねた。朝の光が心地よい“ゑげれす館”で美味しいコーヒーを頂きながら、先生の写真をたくさん撮らせてもらった。

電車から外を眺めるのが好き。それも、各駅停車ぐらいのスピードがちょうどいい。ニューヨーク・ブルックリン。灰色の空、突如目の前に現れた赤いサイン。すかさず、iPhoneのシャッターを切った。

東京・南青山にある世界一大好きな花屋「ル・ベスベ」。今年9月に急逝された高橋郁代さんからは、人生において大切なことをたくさん教わった。今日も明日も「ル・ベスベ」の花はずっと美しい。

良く言えば好奇心旺盛。悪く言えば飽き性な性格だからか、職人という生き方に憧れる。写真は3年ほど前にロンドンのサビルロウで撮った一枚。きっと初老のテーラーの背中が格好良く見えたのだと思う。

沖縄本島最北端に位置する国頭村。そのまたさらに最北の集落“奥”にある民宿「海女木」 (みやぎ) 。茅葺き屋根の下、囲炉裏をご主人や他の宿泊者と囲むのが楽しい。その窓だけは南向きだ。

“困った時はルノアール”。そんな格言はないけれど、アイデアに煮詰まったときはエスケープ。お気に入りは、渋谷東急ハンズ前店の窓際の席。町行く人と水出しコーヒーが僕のピンチを救ってくれる。

パリに暮らす友人カメラマンのキッチン。きっと美し過ぎた夕日のせいだと思うのだけれど、この空の下、それぞれの生活があるんだと、柄にもなくちょっとセンチメンタルな気持ちになった。

 

 

b>柴田隆寛/Takahiro Shibata
編集者。マガジンハウスのクオリティライフ誌『& Premium』エグゼクティブディレクター。主な編著書に『TOOLS』『リサ・ラーソン作品集』『ビームスの沖縄』などがある。その他、ウェブマガジン『LIFECYCLING』『ONE DAY -犬と僕たちの生活』のディレクションはじめ、広告やイベント制作、ブランディングなどを手がける。2014年10月には、自身が編集を手がけた『柚木沙弥郎 92年分の色とかたち』 が、グラフィック社より刊行された。 http://magazineworld.jp/premium/

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