まどけんちく体操

June 28, 2016

第3回 アラブ世界研究所

ひとりの建築家が彗星のごとくこの世に現れ、人々を驚かせることがある。今回取りあげる建築、「アラブ世界研究所」もまた、フランス人建築家、ジャン・ヌーヴェルの存在を世界に知らしめた、初期の代表作である。国際コンペを勝ち抜いたヌーヴェルの提案は、あらゆる人々の度肝を抜かせたことだろう。前回取りあげたル・コルビュジエが窓を横長にぶち抜いてみせたのに対して、ヌーヴェルは建物の正面全身に、不思議な採光窓を纏わせた。意味と敬意と、美しさをもって。

  • photo: James Mitchell
June 9, 2016

第2回 サヴォワ邸 (フランス・パリ)

建築の革命とは様式の変遷と思われがちだが、実はすべてを材料が決めてきた。木や石といった天然素材から、鉄やガラス、コンクリートといった工業製品へ。ヨーロッパに産業革命の波が訪れると、建物の様相もガラリと変わった。それまでの伝統的な、重厚でデコラティヴな建築から、人が暮らす機能のために合理的に、最小限にまで装飾をそぎ落とした、全く新しい建築、モダニズムの時代へ。その建築の姿は、当時を生きる人々は誰も、見たことすらなかった代物であったに違いない。建築の工業製品化は、見た目をガラリと変えただけでなく、富める者のみならずあまねく全ての人々に、美しく快適な建物が行き渡る時代の幕開けでもあった。この輝かしい20世紀の到来を建築界で高らかに宣言した人物こそ、近代建築のゴッドファーザー、ル・コルビュジエであった。

しかし産業革命以後の素材を用いた建築を設計していたのはコルビュジエだけではないし、実際コルビュジエ自身、鉄筋コンクリートの建築をいち早く手がけた建築家、オーギュスト・ペレの事務所に学んでいる。なぜコルビュジエだけが、そんなにすごいのか。その理由のひとつは、単に新たな素材で美しい建築物を作っただけではなく、自身の建築理念こそが、これからの全人類が暮らすものであることを予言し、それを多くの人々に知らせるべく運動を起こし、簡潔にまとめ上げ、スタンダードを自ら編み上げたことにある。つまり革命だけでなく、新たな時代の普遍という、とてつもなく広大な風呂敷を、世界に対して明快に広げてみせたのだ。

May 23, 2016

第1回 パンテオン

驚異のドームに、一筋の光 パンテオン(イタリア・ローマ)

建物には、いくつかの穴が開いている。そのうち私たちが日常生活の中で触れている穴が、ふたつある。ひとつは「誰か」が出入りするための穴、出入り口。ひとつは「何か」が出入りするための穴、窓。