田熊隆樹 (早稲田大学大学院)

Ryuki Taguma (Waseda University)

1992年東京生まれ。2014年早稲田大学創造理工学部建築学科卒業。卒業論文にて優秀論文賞、卒業設計にて金賞受賞。2014年4月より早稲田大学大学院・建築史中谷礼仁研究室修士課程在籍。2014年6月、卒業設計で取り組んだ伊豆大島の土砂災害復興計画を島民に提案。2015年度休学し、東は中国、西はイスラエルまで、アジア・中東11カ国の集落・民家をめぐって旅する (台湾では宜蘭の田中央工作群にてインターン) 。

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November 8, 2016

第4回 烏鎮・「景区」外の家 (後編)

「あなたの家」「あなたの家」と繰り返しながら、景区外の町を爺さんと40分ほど歩いたと思う。その間に何やら新しい大きな建物の建設現場を見たり、舗装されていない細い道を歩いたりと、観光地とは違った生活のシーンをたくさん見た。ついに爺さんの家らしい場所にたどり着いた(あとで気付いたことだが、僕は「あなたの家」という単語さえ間違えていた)。
その家は平屋で、レンガを積んだ壁を白く塗った閉鎖的な家であった。屋根の瓦は景区で見た古い建物と似たようなもので、よく見るとレンガの積み方も似ている。景区外といってもそこに共通点はあるように思えた。ここも一気に建てられたのだろう、周辺にも同じような家が並んでいる。

  • 案内された爺さんの家の正面
October 5, 2016

第3回 烏鎮・「景区」外の家 (前編)

上海からバスに乗って2時間、浙江省北部にある烏鎮(Wuzhen)という町に着く。ここは水郷の町として有名な観光地である。上海も含めたこのあたりは、中国古代文明を支えた、長江によってできた三角州上に位置している。そのため起伏はなく、縦横に水が巡り水郷集落が多く残っている。多くの中国人観光客にまぎれて、まずは僕も「アジアのベニス」と形容されるその観光地を目指した。

1300年の歴史がある烏鎮は、十字に走る川によって東西南北に分かれている。その中で「景区」(=景勝地、風致地区)と呼ばれる東西の区域は、政府による管理がなされ、多くの人で賑わっている。

僕が向かった「西柵」と呼ばれる西側の観光地では、元々住んでいた住民がすべて移住し、近隣に新しく建てられた住居に住んでいるのだという。つまり村の抜け殻の中に、飲食店や宿が入った場所なのであった。政府の観光政策だというが、その方法が良いのか悪いのかはわからない。ともかく、建物に罪はない。

  • 烏鎮、西柵の風景。もとの住民は既に移住し、建物だけが残る
September 21, 2016

第2回 上海・窓から生える鉄の棒 (後編)

見るものが決まると、足取りは一気に軽くなる。鉄の棒を探す旅のはじまりである。といっても、10歩も歩けばすぐに見つかる。さっそく、当然のように無数の鉄の棒が生えている集合住宅を発見した。鉄の棒の下には何台か車が停まっているが、落ちてきたりしないのだろうか、少し不安になる。

  • 無数の鉄の棒の下には、車が停まっていた
September 6, 2016

第一回 上海・窓から生える鉄の棒 (前編)

上海に来て、騒がしさに驚いた。わるい意味じゃない。食堂に行っても市場に行っても、自分を主張しないと話なんて聞いてもらえないような場所が上海だった。立ち並ぶ高層ビル群は、中国最大都市としての発展をものがたり、そのシルエットは、地下鉄の切符を飾るアイコンとなっている。

  • 高層ビルのシルエットがあしらわれている地下鉄の切符