July 15, 2014

堀江敏幸『戸惑う窓』

窓の前に立ったとき、ふと浮かんだ感情から内なる宇宙にとびたつエッセイ集。

筆者は初めの章でこう述べます。『窓とはいったいなんだろうか? (中略) 窓について考えるたびに私は戸惑う。それどころか、とまどう、という音のなかに「まど」の響きを聞いてしまうのだ。』一瞬、こんなにも窓について考えた人がいるのかと驚きますが、窓の前に立ったときに感じる様々な気持ちを振り返れば、私たちも筆者の戸惑いに共感できるのではないでしょうか。

筆者はこの戸惑いに対して、『主導権は窓に渡しておけばいいのである。』と言い、窓を意識した文学作品、絵画、写真、映画、詩歌、科学の知識まで、次々と思い浮かべながら、宇宙空間とも言える無限の思考をただよっていきます。万葉集、サン=テグジュペリとレオン・ウォルト、ヒッチコックの映画「裏窓」、マチスの絵画、リルケの詩、毛細血管の「有窓性」・・・筆者の幅広い知識を愉しみながら、読者は窓とそこに生じる「何か」を追って行くことができます。

窓とはどんな存在なのか、窓から与えられる不安、期待、さまざまな感情・・・。著者の文章・思考をたどって行くうちに、窓が明るく、みずみずしく見えたり、不気味に見えたり、まるで白昼夢を見ているような気持ちになります。

装丁家・間村俊一による美しい装丁、読む者を夢想へいざなうページの余白も素晴らしく、何度も窓の前に立ちながら、ゆっくりと読みたい一冊です。

 

『戸惑う窓』
著者|堀江敏幸
出版|中央公論新社
出版年|2014年
定価|2,200円+税